チャイコフスキー/交響曲全集
(Peter Ilyich Tchaikovsky : The Complete Symphonies)

19世紀ロシア最大の作曲家チャイコフスキーはマンフレッド交響曲を含む7つの交響曲を残しておりますが、番号付きの6曲で見ますと、創作時期にはかなりの偏りがございます。
第1交響曲「冬の日の幻想」は1866年作。6年おいて第2が1872年、第3が1875年、第4が1877年。30歳を過ぎてからは、およそ6年間に3曲、ざっと2年に1曲という快調なペースで交響曲を世に送っております。
ところが第4交響曲のあと、チャイコフスキーの交響曲創作の筆は停滞し、次の第5交響曲が書かれたのは1888年、番号付き交響曲としては10年以上のブランクがございます。
Tchaikovsky, 1840〜1893
40歳代のチャイコフスキーはスランプに見舞われていた、という説もございますが、作品の内容的に見てみますと、第3と第4の間には越えられないほどの断層があり、30歳代の中ほどで直面した精神的危機(当然ながら不幸な結婚とその破局も含まれますが、それだけではございません)がチャイコフスキーの創作態度に大きな影を落とし、その時点で最善の努力によって書き上げた第4交響曲のあと、それを超えるような交響曲を生み出すためには10年の歳月を要した、というのが真相だったのではないでしょうか?
第5交響曲が当初作曲者自身にとっては意に満たない作だったとしても、その音楽的レヴェルの高さは第3までの交響曲とは比較にならず、新たな交響曲作曲に手応えを感じたチャイコフスキーは、流産に終わった「人生交響曲」を間に挟みながら、ついに1893年、最後の傑作となる第6交響曲「悲愴」を書き上げます。第4交響曲に始まったチャイコフスキー独自の「魂の告白」としての交響曲は、第6によって見事に完結したと申せましょう。

「あそびの音楽館」では、ピアノで演奏した「チャイコフスキー交響曲全集」のページを作ることにいたしました。
編曲については、第1、第3、第5の3曲については不手際ながらJun-Tがやっておりますが、第2(改訂版)および第6は作曲者自身のもの、第4はタネーエフの手に成るものを使用しております(第2、第6には蛇足もございます)。
本来、絢爛豪華なオーケストレーションによる作品をピアノのモノクロームな音色でお楽しみいただけるものかどうか、大きな危惧はございますが、時間つぶしにでもお耳を拝借できれば幸甚でございます。

(2007.4.22〜2016.5.3)

 交響曲第1番 ト短調 作品13「冬の日の幻想」(Symphony No.1 in G minor, Op.13 "Winter Daydreams") 
 交響曲第2番 ハ短調 作品17(Symphony No.2 in C minor, Op.17) 
 交響曲第3番 ニ長調 作品29(Symphony No.3 in D major, Op.29)  
 交響曲第4番 ヘ短調 作品36(Symphony No.4 in F minor, Op.36) 
 交響曲第5番 ホ短調 作品64(Symphony No.5 in E minor, Op.64) 
 交響曲第6番 ロ短調 作品74「悲愴」(Symphony No.6 in B minor, Op.74 "Pathètique") 
 マンフレッド交響曲 作品58(Manfred - Symphony, Op.58) 

◇「あそびのピアノ連弾」に戻ります◇
◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集
◇編 曲:P. チャイコフスキー/N. タネーエフ ◇編曲・MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma