チャイコフスキー/交響曲第3番 ニ長調 作品29 (Tchaikovsky : Symphony No.3 in D major, Op.29) | |
1875年から1878年までの約4年間、チャイコフスキーの創作力は頂点を極めておりました。今日チャイコフスキーの代表作とされる作品の多くが、この時期に書かれております。 オーケストラを用いた作品に限って申しますと、ピアノ協奏曲第1番、「白鳥の湖」、「フランチェスカ・ダ・リミニ」、「ロココ風の主題による変奏曲」、交響曲第4番、「エウゲニ・オネーギン」、ヴァイオリン協奏曲という具合で、この時期の作品群はベートーヴェンの場合に倣って、「チャイコフスキーの傑作の森」と申しても過言ではなさそうです。 |
さて、交響曲第3番は創作力の高まったこの時期(1875年)、極めて有名なピアノ協奏曲第1番に続いて、ごく短期間(約2ヶ月)で作曲された作品でございますが、これはまたなんとしたことか、大コケにコケております^^; 「コケた」というのは表現として適切でないかもしれませんが、ともかく第3交響曲がチャイコフスキーの番号付きの6つの交響曲の中ではもっとも影が薄く、一般からも歓迎されていないのは事実でございます。 その最大の理由は、聴く者を捉えて離さない強烈な訴求力の欠如ではないかと愚考いたします。たとえば第1楽章の展開部など、第4や第6のすばらしい展開部を書いた同じ作曲家の手から生まれたとは思えないほど機械的で生気に乏しい仕上がりになっております。
しかしながら、これを一種の交響的ディヴェルティメントと考えますと、失敗作として捨て去るには惜しい作品のような気がしてまいります。
なお、この曲は5楽章で構成されており、また、6曲の中で唯一主調が長調である点でもチャイコフスキーの交響曲としては異色です。 |
(2007.6.17〜7.1) |