チャイコフスキー/交響曲第3番 ニ長調 作品29
(Tchaikovsky : Symphony No.3 in D major, Op.29)

Tchaikovsky 1875年から1878年までの約4年間、チャイコフスキーの創作力は頂点を極めておりました。今日チャイコフスキーの代表作とされる作品の多くが、この時期に書かれております(1879年から87年までは一種の停滞期で、88年以降は第二の絶頂期を迎えます)。
オーケストラを用いた作品に限って申しますと、ピアノ協奏曲第1番(1874〜75)、「憂鬱なセレナード」(1875)、「白鳥の湖」、「フランチェスカ・ダ・リミニ」、「スラヴ行進曲」、「ロココ風の主題による変奏曲」(以上1876)、交響曲第4番(1876〜77)、「エウゲニ・オネーギン」(1877〜78)、ヴァイオリン協奏曲(1878)という具合で、この時期の作品群はベートーヴェンの場合に倣って、「チャイコフスキーの傑作の森」と申しても過言ではなさそうです。
さて、交響曲第3番は創作力の高まったこの時期(1875年)、極めて有名なピアノ協奏曲第1番に続いて、ごく短期間(約2ヶ月)で作曲された作品でございますが、これはまたなんとしたことか、大コケにコケております^^;
「コケた」というのは表現として適切でないかもしれませんが、ともかく第3交響曲がチャイコフスキーの番号付きの6つの交響曲の中ではもっとも影が薄く、一般からも歓迎されていないのは事実でございます。
その最大の理由は、聴く者を捉えて離さない強烈な訴求力の欠如ではないかと愚考いたします。たとえば第1楽章の展開部など、第4や第6のすばらしい展開部を書いた同じ作曲家の手から生まれたとは思えないほど機械的で生気に乏しい仕上がりになっております。

しかしながら、これを一種の交響的ディヴェルティメントと考えますと、失敗作として捨て去るには惜しい作品のような気がしてまいります。
先ほどけなした第1楽章を例にとりますと、有機的な構成をもったソナタ形式として見れば、展開部の空虚さが重大な欠陥と感じられますが、華麗な第1主題、哀感を帯びた第2主題、民謡ふうの軽妙なコデッタなど、個々の場面では魅力的な要素に満ちております。他の楽章も同様で、交響曲としては失敗作かもしれませんが、バレエ音楽かなにかを聴くつもりで聴けば、なかなかに楽しめる音楽ではないかと思われます。

なお、この曲は5楽章で構成されており、また、6曲の中で唯一主調が長調である点でもチャイコフスキーの交響曲としては異色です。
ちなみに、第5楽章はポーランドの舞曲「ポロネーズ」のスタイルをとっており、そのため全曲は「ポーランド」というニックネームをもっておりますが、曲が本質的にはポーランドと何の関係もないことはいうまでもございません。

(2007.6.17〜7.1)

交響曲第3番ニ長調 作品29・全曲連続再生 

第1楽章/導入部とアレグロ:モデラート・アッサイ−アレグロ・ブリランテ 
       (I. Introduzione e Allegro : Moderato assai - Allegro brillante)
第2楽章/アラ・テデスカ:アレグロ・モデラート・エ・センプリーチェ 
       (II. Alla tedesca : Allegro moderato e semplice)
第3楽章/アンダンテ・エレジアーコ (III. Andante elegiaco) 
第4楽章/スケルツォ:アレグロ・ヴィーヴォ (IV. Scherzo : Allegro vivo) 
第5楽章/フィナーレ:アレグロ・コン・フォーコ、テンポ・ディ・ポラッカ 
       (V. Finale : Allegro con fuoco ; Tempo di Polacca)

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◇背景画像提供:フリー写真素材Canary様
◇編 曲・MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma