その目的のため、ヴォータンは人間の女と交わり、双生児の兄妹を生み出しました。これがジークムントとジークリンデでございます。
二人は幼い頃、敵部族の襲撃によって生き別れ、ジークムントは父ヴェルゼ(ヴォータンの仮の姿)とともに荒野をさすらいながら逞しい若者に成長しました。けれども、あるときその父も姿を消し、今では一匹狼のようにして生きております。
放浪の道すがら、ある地方の一族のトラブルに巻き込まれたジークムントは、その一族全体を敵に回して戦うことになり、多勢に無勢で剣も折れ、激しい嵐の中、逃走の果てに一軒の家に辿り着きます。そこは土地の豪族フンディングの館で、フンディングの妻ジークリンデが留守を守っておりました。
ジークリンデは幼い頃略奪されたあと、無理やりフンディングの妻にされていたのでございます。
お互いの身の上を語り合ううちに二人には愛が芽生え、互いを血を分けた兄妹と知りつつも、愛の激情から身体を交わらせてしまいます。
このときジークムントは、館の広間のトネリコの木の幹に突き立ち、これまで誰にも引き抜くことのできなかった一振りの剣を手に入れ、これを「ノートゥング」と名づけるのですが、この剣こそは、やがてこの館を訪れるであろう息子ジークムントのために、かつてヴェルゼ(ヴォータン)が残していった宝剣でございました。
ところで、ジークムントが戦うことになった一族とは、なんとフンディングの一族だということがわかり、トラブルを避けるために二人は手に手をとって逃げ出します。平たくいえば、駆け落ちでございますね^^