ブラームス/ピアノ・ソナタ全集
(J. Brahms : The Complete Piano Sonatas)

ピアノはブラームスにとってもっとも身近な楽器でした。したがって、ピアノ曲で作曲家としてのキャリアをスタートしていることは不思議ではございません。
それにしても、1852年から翌年にかけて、すなわち18歳頃から20歳というきわめて若い時期に書かれた3つのピアノソナタが、いずれも巨匠的な貫禄を備えておりますことは驚嘆すべきでしょう。一見まだ少年じみた風貌のブラームスが弾くハ長調の第1ソナタがシューマンに大きな衝撃を与え、この新人を絶賛する文章を書かせたのも充分に理解できます。
Johannes Brahms, 1833〜1897
ピアノ・ソナタで出発したブラームスでしたが、20歳で書き上げた第3番を最後に、このジャンルからは手を引いてしまいます。ピアノ曲に関しては、興味の中心が変奏曲と小品に移り、ついに再びピアノ・ソナタを書くことはありませんでした。
しかしながら、ごく若い時期に書かれたこれら3つのピアノ・ソナタは、音楽史上重要な地位を占めております。

ピアノが楽器として完成され、多量の作品が生み出された19世紀という時代ですが、ベートーヴェン以降、ピアノ・ソナタの分野で大きな業績を残した作曲家は実はきわめて少数でございます。
まず、ベートーヴェン後期とほぼ同時期のシューベルト。晩年の一連のピアノ・ソナタは、ベートーヴェンとは異なる方向性で大きな存在感をもっております。
次いで、ショパンとシューマン。それぞれ3曲のピアノ・ソナタを残しておりますが、ショパンの第2と第3、シューマンの第1と第2は今日でも重要なレパートリーとして残っております。
そして、そのあとに来るのがリストとブラームス。
リスト唯一のピアノ・ソナタの完成が1853年。ブラームスの最後のピアノ・ソナタである第3番が書かれたのも同じ年ですが、この2作はきわめて鋭い対照を見せております。
単一楽章構成で斬新なリストと堅固な構成をもつ伝統的なブラームス。ロマン派盛期の作品ながら、この2作は真逆の方向性をもっていると申してよろしいでしょう。
この2作をもって、19世紀ピアノ・ソナタの歴史は幕を閉じます。もちろん、その後もピアノ・ソナタそのものはいろいろな作曲家によって書かれましたが、音楽史上の重要性という点からみれば、ロマン派のピアノ・ソナタに終止符を打ったのがリストとブラームスの作品であることは否定できない事実でしょう。ピアノ・ソナタが再び輝きを取り戻すには、20世紀のスクリャービン、プロコフィエフを待たなければなりません。

ここでは、ブラームスの3つのピアノ・ソナタ全曲を取り上げてみました。
ベートーヴェン以後、ピアノ・ソナタの分野で19世紀最後の傑作ともいえるブラームスの作品、お楽しみいただければ幸甚です。

(2005.1.20〜2021.12.7/Jun-T)

 ピアノ・ソナタ第1番 ハ長調 作品1(Piano Sonata No.1 in C major, Op.1) 
 ピアノ・ソナタ第2番 嬰ヘ短調 作品2(Piano Sonata No.2 in F sharp minor, Op.2) 
 ピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調 作品5(Piano Sonata No.3 in F minor, Op.5) 

◇あそびのエトセトラに戻ります◇
◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集
◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録音:jimma