ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 作品5
(J. Brahms : Piano Sonata No.3 in F minor, Op.5)

この作品はブラームスのピアノ・ソナタとしては最後のものですが、作曲されたのは1853年、作曲者はようやく20歳という若さでございます。第2楽章と第4楽章はこの年の8月までに書かれ、残りの楽章はシューマンに面会したあとの10月にデュッセルドルフで書き上げられております。
シューマンの激賞に満ちた文章「新しき道」の効果で、無名の新人だったブラームスはたちまち有名人となり、このソナタも作曲の翌年には早くも出版されましたが、全曲の初演は意外に遅く、完成から10年後の1863年にウィーンでブラームス自身によって行われました。
このとき曲を聴いたハンスリックがブラームスの音楽に惚れこみ、以後ブラームスの強力な支持者となったそうでございます。

第3ソナタは5つの楽章から成っております。ブラームスの多楽章ソナタとしては異例でございます。
第2楽章と第4楽章は対になっており、曲全体はスケルツォを中央に置いた対称的な形をとります。ただし、第4楽章と終楽章は切れ目なく演奏されますので、第4楽章は終楽章への大がかりな序奏と見ることもできないわけではございません。
両端楽章、とりわけ第1楽章は20歳の作曲家の若書きとは思えない巨匠的で雄大な音楽で、シューマンが感嘆したように、ブラームスはその最初から大家の風貌を帯びていたと申すほかございません。

3つのピアノ・ソナタの最後を飾り、今日でも演奏回数の多いこの作品、お楽しみいただければ幸甚でございます。

(2021.11.27〜12.7)

ピアノ・ソナタ第3番ヘ短調 作品5・全曲連続再生 

第1楽章/アレグロ・マエストーソ(I. Allegro maestoso) 
第2楽章/アンダンテ・エスプレッシーヴォ(I. Andante espressivo) 
第3楽章/スケルツォ:アレグロ・エネルジコ(II. Scherzo : Allegro energico) 
第4楽章/間奏曲(回顧):アンダンテ・モルト 〜
 第5楽章/フィナーレ:アレグロ・モデラート・マ・ルバート
 
   (IV. Intermezzo"Rückblick" : Andante molto - V. Finale : Allegro moderato ma rubato) 

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◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集
◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録音:jimma