あいつが、そう言ってくることを何となく察知していた俺は、軽く頷くと、直ぐさまに喋り出した・・・。「何て言うのかな・・・、上手く言葉じゃ言えないんだけど、世の中にはさ、凄く詰まらないことだったとしても、人として生きて行く上で、絶対に忘れちゃいけない事とか、流しちゃいけない事って結構あると思うんだ。逆に、凄く大事なことなんだけれども、忘れなきゃいけない事とか、流さなきゃいけない事も・・・。当然、学校でなんか習わないし、親が教えてくれるものでもない。それでも、大人と呼ばれる頃までには、暗黙の中で解ってなきゃならない約束事みたいなもの・・・。今の日本にはそんな事がゴロゴロ転がっていて、当たり前のように破られている。あの時、お前が言ってた通り、俺達みたいな一般庶民がどんなに力んでみた所で、力なんて所詮たかが知れてる。だからって、これから先もずっと何もしないままで、何も言わないままで、仕方ないって自分に言い聞かせながら生きて行ったって、仮に自分が金持ちになったとしても、綺麗な女に囲まれて暮らしたとしても、心の底から楽しいなんて思えないんじゃねえか。
今のガキ共の笑った顔見てみろよ。殆どのガキがシラけた顔で笑ってやがる。シラた大人ばっかり見て育って来たからだよ。みんな冷めちまって、何かを始めようとする前から、どうせ、所詮、なんて諦めちまってる。結局、失敗した時の惨めな思いとか、格好悪い姿を他人に見られたくないとか、そういう苦痛から逃げてるだけなんだと思う。
一生暇潰しだけの生活を送って行くようなもんだぜ。まぁ、他の連中がどう考えてるかなんて、詳しいことはよく解らないけど、俺はとにかく、自分の価値観の中で「詰まらない」と感じることをダラダラと続けて行くことが何よりも嫌いなんだ。自分で抱いた夢とか、好きな人を喜ばせてあげたいって願望とか、何らかの目的を達成するまでに味わう苦痛なら、幾らでも耐えて行けるけど・・・。そしてもうひとつ、自分が直接されたら許せないことを、他人には同じことを平気で出来る奴、そして周りで見て見ぬ振りをきめこんでる奴が大嫌いなんだ。だから、そんな奴らとはとことん戦っていく。正義は何かとか理想社会とは何かとか、そんな形や定義づけなんか二の次でいいんだ。何度も言うようだけれど、俺は「つまらねえ」ってことが大嫌いなんだ。それだけだ・・・。」