そんな俺達が何かを懸命に訴えてみた所で、真面目に聞く奴なんて一人もいないだろう。そう結局、俺達の力で変えられるモノなんて何も有りゃしない。悲しいけど、これが現実なんだ。社会人になって、好きでもない仕事を毎日続けて来て、あっという間に三年も経っちまったけど、最近その「自分の無力さ」をやたらと痛感するんだ。そしたらさ、社会とか未来のことを「真剣に考えること自体」が時間の無駄なんじゃないかって思えて来たんだ。これからは、「自分が楽しく生きて行く」ってことだけを考えることにした。
毎日つまらない仕事をしていくにも、例えば俺なんかは、三十歳までには自分で経営するショットバーを開きたいと思っている。当然大きな費用が必要になってくる。その費用をためるために今の仕事を続けてゆく・・・。そういう目的意識を持って働いて行けばつまらない仕事をしていても、今までみたいに空しくなることなんてないだろ。「愛」なんてものも、あんまり深く考え過ぎて、頭でっかちになっていくより、やりたくなった時には、やりたくなってる女を見つけて、お互いが楽しめれば誰も傷つくこともない。 そうすりゃストレスなんて溜まらないし、きっとおもしろ楽しく生きて行けるだろ。お前もそう思わないか・・・。」  次の瞬間には、俺はあいつに殴り掛かっていた。
その後の細かい事はよく覚えていないが、ただ、あの時二人とも泣きながら殴り合っていたことは鮮明に覚えている。「ガキの頃は、あんな喧嘩しょっちゅうしてたな。それでも、二人とも次の朝にはケロッとした顔でいつも通りに、一緒に学校行ってさ・・・。何か、知らないうちに・・・、いつの間にか、元に戻れるまで一年もかかるようになっちまってたな。」そう切り出したあいつの言葉に、俺は頷きながらあいつのグラスにビールを注いだ。まだ何処となくギクシャクしたまま、俺達は一年振りにグラスを合わせた。在り来りの世間話を2、30分もする頃には、「二人のリズム感」を取り戻したのか、俺達はお互いの心地よさに浸っていた。
「あの時の話の続きをしよう。」