◇ニーベルングの指環・序夜◇

ラインの黄金(Das Rheingold)

◇あそびのリブレット◇


■第3場■
(地下世界のニーベルハイム。宝の山の前で、アルベリヒがミーメを殴っている)

●ミーメ●
兄貴、やめてくれ!乱暴しないでくれ!

●アルベリヒ●
黙れ、おれの命令に従わないとこうなるのだ!
いつになったらおまえに命じた新製品ができるのだ?

●ミーメ●
わしだって、一生懸命やってるんだ!
でも、あの細工物、なかなか難しくてなぁ…

●アルベリヒ●
ふざけるな!
おれの指環の力があれば、たやすくできるはずじゃないか!
おまえ、まさかあれを自分の物にしようというつもりじゃないだろうな?

(アルベリヒ、ミーメを殴る)

●ミーメ●
痛い!やめろ!助けてくれ!

(ミーメ、痛さのあまり隠れ兜を落とす)

●アルベリヒ●
これはなんだ?ん?
見ろ、ちゃんとできてるじゃないか!
こいつ、やっぱりネコババしようとしていたな?
油断も隙もないやつだ!

(アルベリヒ、隠れ兜を拾い、頭にかぶる。すると、兜の力でアルベリヒの姿が見えなくなる)

●ミーメ●
兄貴、おい、兄貴!
見えないよ、どこへ行ったんだ?

●アルベリヒ●
うむ、こりゃ上出来だ^^

(アルベリヒ、ミーメを何度も殴る)

●ミーメ●
痛い痛い、やめてくれ!

●アルベリヒ●
うわははは。これができれば鬼に金棒だ。
おまえはおれに言いつけられた仕事を真面目にやっていればいいのだ。
サボろうなどとは考えるな!

(アルベリヒ、立ち去る)

●ミーメ●
くそ、ひどい兄貴だ…
いたたた、身体中傷だらけだ…(>_<)

(ヴォータンとローゲが現れる)

●ローゲ●
おいおい、何をそんなに苦しんでるんだ?

●ミーメ●
この傷を見てくれ、アルベリヒにやられたんだ!
わしはあいつの弟だが、いまじゃ奴隷以下の扱いだ!

●ローゲ●
ニーベルング族随一の鍛冶屋のおまえが、どうしてまたやられっぱなしなんだ?

●ミーメ●
あいつは、ラインの黄金で指環を作りやがったんだ。
指環の力で、ニーベルハイムの連中は一人残らずあいつの奴隷にされちまった。
あの指環の力には逆らえない。
おまけに、あいつはわしに隠れ兜を作らせやがった。
これでもう、あいつの権力はパーフェクトだ。

●ローゲ●
隠れ兜?そんなにすごい物なのか?

●ミーメ●
そりゃあんた、あれを身に着ければ思うがままの姿に変身できる。
姿を隠すことだってできるんだ。
あいつがどこで見張ってるかわからないとなると、落ち着いて一服することもできやしない!
…ところで、あんたたちは誰だ?

●ローゲ●
われわれは天上界から来たのさ、おまえみたいに苦しめられてるニーベルハイムの人民を救うためにねw

●アルベリヒ●
無駄口をたたいてるんじゃない!

●ミーメ●
助けてくれ!アルベリヒだ!

(アルベリヒ、姿を現す)

●アルベリヒ●
油を売ってる暇があったら、とっとと坑道の奥へ行って黄金を掘り出してこい!

(アルベリヒ、ミーメを鞭で追い立てる。ミーメ、頭を抱えて逃げて行く)

●アルベリヒ●
神々がニーベルハイムに何の用だ?

●ヴォータン●
ニーベルハイムに新たな支配者が現れて強大な魔法を使っていると聞いたのでな。
どんなものか視察に来たのだ。
それにしてもたいした宝の山ではないか。

●アルベリヒ●
ふん。神々がえらそうに。
だが、おまえたちの支配も長くはないぞ。
おれのこの指環には、世界を支配する力がある。
宝の山に驚いているようだが、こんなもの、おれの力で何倍にも増やすことができる。
おれの部下は昼夜を問わず、金の鉱脈を掘り続けているのだ。
おれはこの宝を軍資金にして、最強の軍勢を組織し、やがておまえたちの天上界をも征服するつもりだ。
その時まで、上の世界で女どもとのんきに戯れているがいい!

●ヴォータン●
われら神々の一族を滅ぼすだと?
この妖怪め、思い上がりおって…!<`ヘ´>

●ローゲ●
まあまあ、ここは穏やかにいきましょうよ^^
なあアルベリヒ、おまえがたいした力を手に入れたことはわかったが、寝首を掻かれる心配はないのかね?
おまえの弟なぞ、相当におまえを恨んでいるようだが?

●アルベリヒ●
ふん、頭の悪いおまえら神々の心配しそうなことだw
だが、おれに抜かりはない。
眠っているときにはこの隠れ兜を使うから、おれの姿は消えて見えないのだ。

●ローゲ●
それはすごいアイテムだな!姿を消せるのか!

●アルベリヒ●
ふふん、驚くのはまだ早い。
姿を隠すばかりでなく、好きな姿に変身することだってできるのだ<`〜´>
なにしろ新案特許出願中だからな。

●ローゲ●
ほぉ〜〜〜〜!
しかし、この目で見てみないことには、とても信じられないね。

●アルベリヒ●
おれがでたらめをいってると思うのか?
よかろう、試してみたらどうだ?

●ローゲ●
じゃ、思いっきり大きなものになって見せてくれ。

●アルベリヒ●
ふふふん、たやすいことだ。見ているがいい。

(アルベリヒ、隠れ兜をかぶる。すると、アルベリヒの姿が消え、大蛇が火を吹きながら姿を現す)

●ローゲ●
うわ、なんと恐ろしい姿だ!呑み込まれそうだ!

●ヴォータン●
はっははは、うまく化けたものだ!

(アルベリヒ、元の姿に戻る)

●アルベリヒ●
どうだ、信じる気になったか?

●ローゲ●
いやはや、すごいものだ。寿命が縮んだよ。
しかし、大きなものにはなれても、小さくなるのは難しいだろう?

●アルベリヒ●
馬鹿め、どっちだって同じことだ。

●ローゲ●
いや、大型化より小型軽量化の方が技術的に難しいのは一般常識だ。
渋るところをみると、小さくなるのは苦手なんだろ?w

●アルベリヒ●
愚か者め、おれにできないことはないのだ!
いってみろ、どれくらい小さくなればいいんだ?

●ローゲ●
じゃ、ヒキガエルくらいの大きさになれるか?
なれたらそれこそ兜を脱ぐが。

●アルベリヒ●
ふん、そんなことは屁でもない。
いいか、よく見てろ!

(アルベリヒ、隠れ兜をかぶる。すると、アルベリヒの姿が消え、ヴォータンの足許に小さなヒキガエルが現れる)

●ローゲ●
ヴォータン、今です!

●ヴォータン●
おう、合点承知!

(ヴォータン、ヒキガエルを足で踏みつける。ローゲが隠れ兜をむしり取り、元の姿に戻ったアルベリヒをすばやく縛り上げる)

●アルベリヒ●
おのれ、騙しおったな!
こんな卑劣な手を使うのが神々のやり方か!

●ローゲ●
騙されるおまえがアホなのさw

●ヴォータン●
ローゲ、長居は無用だぞ。
さあ、こいつを連れて天上界へ戻るのだ!

(ヴォータンとローゲ、アルベリヒを引っ立てて天上界へ昇って行く)

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「ニーベルングの指環に戻ります
◇背景画像提供:フリー写真素材Canary様
◇テキスト:Jun-T