(天上界。ヴォータンとフリッカが眠っている。彼方の山の上には、壮大なヴァルハラの城が聳えている。フリッカが目覚める)
●フリッカ●
あなた!起きてくださいな、あなたったら!
●ヴォータン●
むにゃむにゃ…
世界一の立派な城だ…わしにふさわしい城だ…ぐふふ…
●フリッカ●
寝ぼけてる場合じゃありませんよ!まったくもう、だらしのない<`ヘ´>
●ヴォータン●
なんだ、おまえか。もう朝か?
お、城が出来上がったようだな。
う〜〜〜む、見事だ!夢の中で見たのと同じくらい立派ではないか!\(^o^)/
●フリッカ●
お城が出来たのはいいけど、支払いはどうするおつもり?
あなたったら、私に内緒で勝手に巨人たちにフライアをやるなんて約束してしまって!
フライアは私の妹なんですからね!
●ヴォータン●
ま、そうカリカリするな。シワが増えるぞ^^
支払いのことは心配ない。本気でフライアを巨人どもに渡す気なんて、あるはずないだろ?^^
ローゲがうまくやってくれることになってるから大丈夫だ。
●フリッカ●
ローゲですって?
あんないい加減な男を、あなたは信用してるんですか?
あの男は口先だけのロクデナシですよ!
ローゲの口車に乗って、分不相応なお城を建てるなんて、まったくあなたときたら!
●ヴォータン●
おまえだって一戸建てのマイホームを欲しがっていたではないか!
●フリッカ●
新しいおうちが出来れば、あなたもフラフラ出歩かなくなると思ったからですよ!
あなたがあっちこっちで女遊びをしてる間、ひとりで待ってる私の気持ちにもなってほしいわ。
●ヴォータン●
だから、あんなに立派な城を作ってやったのではないか。ぶつぶついわないでくれ(´д`)
●フリッカ●
その建築費がフライアってのに納得がいかないんですよ!
これじゃ人身売買じゃないですか!
(フライアが巨人たちに追われて逃げてくる)
●フライア●
助けて!お義兄さま!お姉さま!
(フライアを追って、巨人族のファゾルトとファフナーが現れる)
●ファゾルト●
神々の長ヴォータンよ、わしらは愚かな巨人だが、請けた仕事は誠実にこなしたつもりだ。
にもかかわらず、賢いあんたがわしらに相応の報酬を出し惜しむとはどういうことだ?
愚かなわしらには納得がいかんのだが?
●ヴォータン●
まあそう喧嘩腰になることはない。
報酬はむろん支払うつもりだが、いったい何が欲しいのか?
●ファゾルト●
いまさらそれはあるまい?
最初の取り決めどおり、フライアをいただこう。
●ヴォータン●
おいおい、あの話を真に受けてもらっては困る。
あれはその場の雰囲気で、ちょっと冗談を言ってみただけだ。
もっとちゃんとした報酬を要求するがいい。
●ファゾルト●
冗談だと?ふざけるな!
●ファフナー●
なぁ兄貴よ、これが神々ってもんの正体だよ(冷笑)
●ファゾルト●
とにかく約束は約束だ、わしらはフライアをもらっていくぞ!
●フライア●
いや〜〜〜ん、誰か、助けて〜〜(;_;)
(フローとドンナーが駆けつけ、巨人たちの手からフライアを助け出す)
●フロー●
私が来たからには安心しろ、フライア!
●ドンナー●
巨人ども、このおれのハンマーを脳天に叩き込まれたいか!
●ヴォータン●
待て、おまえたち!
暴力はいかん、ここは穏やかに話し合うことにしようではないか。
●ファゾルト●
あんたら神々がのんびり生活を楽しんでいる間、わしらは汗水たらして働いた。
そして出来たのがあの城だ。
仕事が終わったいま、約束の報酬を受け取って何が悪い?
●ヴォータン●
報酬を出さないというのではない。だが、フライアはだめだ。
●ファゾルト●
神々の長であるあんたが、自ら契約を破るのか?
契約を司るあんたのその槍に対して、恥ずかしいとは思わんのか?
●ヴォータン●
う〜〜〜む…(ーー;)
ローゲの奴、この大事な時にどこをうろついているのか…
●フリッカ●
だからいったでしょう、いざとなるとあんな男、役に立たないんですよ!
(炎が瞬き、ローゲが姿を現す)
●ヴォータン●
おお、待ちかねたぞ、ローゲよ!
よい知らせを持ってきたんだろうな?
●ローゲ●
いやはや、世界中を巡り歩いて、なんとかフライアに匹敵する宝を探し出そうと駈けずり回っておりました。
●ヴォータン●
ご苦労だったな。で、何が見つかった?
●ローゲ●
それがどうも、どこの世界にまいりましても、異性に対する愛を凌ぐほどの宝は見当たらないようでございまして。
●フリッカ●
手ぶらで戻ったのね、この役立たず!
●ヴォータン●
まあ待て、おまえはローゲの真価を知らないのだ。
●ローゲ●
鳥や獣どころか、虫さえも、異性に対する愛に生きている始末。
巨人たちの仕事ぶりも確かめてまいりましたが、いやはやあの城は立派に出来ておりました。
こりゃ連中がフライアを要求するのも当然かと^^
●ヴォータン●
馬鹿者め、それがおまえの答えか?(怒)
この始末をうまくつけるといったのはおまえではないか!
わしを愚弄すると、この槍でおまえの炎を吹き消してしまうぞ!
●ローゲ●
おっと、興奮なさっちゃいけません、血圧が上がりますよ^^
ライン河を通りかかった時のこと、3人の乙女たちが嘆いているのを耳にいたしました。
聞けば、ラインの黄金をニーベルング族のアルベリヒという男に奪い取られたとか。
その黄金で作った指環を持つ者は、世界を支配する力を得るという話でございました。
●ヴォータン●
ふむ、ラインの黄金については、かつて聞いたことがある。
世界征服の力を秘めた指環か…
そういう貴重品は、神々の長であるこのわしが管理するのが当然だと思うが。
●ローゲ●
ところが、黄金には不思議な魔法が施されておりまして、愛を断念した者にしか指環を作ることが出来ないんだそうです。
●ヴォータン●
愛を断念するだと?
それではわしには指環は作れないではないか!
●ローゲ●
ご心配なく、指環はもう作られてしまいました^^
そのアルベリヒという男が、愛を断念して指環を作り、今ではその力でニーベルング族の国、ニーベルハイムの支配者になっているんだそうで^^
●ヴォータン●
すると、その指環をわしが手に入れることも出来るわけだな?
●ローゲ●
それはもう、うまく策略を弄すれば、いともたやすいことかと^^
●ファフナー●
おい兄貴よ、フライアにこだわらないで、その黄金でもいいんじゃないか?
黄金に世界支配の力があるなら、それを使ってわしらが支配者になれるかもしれんぞ。
●ファゾルト●
うむ…それはそうだが。
●ファフナー●
フライアは諦めちまえよ。黄金で充分だ。
●ファゾルト●
ヴォータンよ、わしらはずいぶんと待たされているが、あんたがそれほどフライアを渡したくないのなら、わしらはニーベルングの黄金で妥協してもいいぞ。
●ヴォータン●
なんだと、わしの物でもない黄金を要求しようというのか、このあつかましい巨人どもめ!
●ファゾルト●
それがいやなら、フライアをもらっていくしかないが。
●フリッカ●
あなた、私の妹をこんな連中にくれてやるつもりなの?
そんなこと、私は認めませんよ!(怒)
●ローゲ●
まぁ、ここはひとつ黄金を手に入れてから、ってことでいかがでしょう?
なにしろ私は、指環をラインの乙女たちに返してやるって約束いたしましたのでね。
約束を守らないと、このローゲが大法螺吹きってことにもなりかねませんので^^
●ヴォータン●
やむを得ん、フライアの代わりに、黄金はおまえたちにくれてやろう。
●ファゾルト●
これで話はついたが、黄金がわしらの手に入るまで、フライアは担保として預かっておくぞ。
なにしろ、神々という連中は信用が置けないからな。
期限は夕方だ。その時刻になったらまた来るが、それまでに報酬が準備されていないなら、フライアは永久に戻らないと思え!
(巨人たち、フライアを引き立てて去る。あたりに霧が立ち込める)
●ローゲ●
フライアが連れて行かれたら、神々は急に老け込んだなw
ま、無理もない。神々は今日はまだフライアの育てたりんごを食べていないのだからな。
フライアのりんごは神々の永遠の青春を維持しているのだ。
フライアがいなくなっていちばん困るのは神々だな。
ま、おれはもともと神々の一族じゃないし、フライアはおれにはケチってりんごを食べさせてくれなかったから、あの女がいなくなってもおれは痛くも痒くもないがw
●ヴォータン●
ローゲ、ぼやぼやするな!
これから大至急ニーベルハイムに行き、黄金と指環を手に入れるのだ!
おまえの悪知恵の見せどころだ、行くぞ!
(ヴォータンとローゲ、地下世界に降りて行く)