(天上界。ヴォータンとローゲが、アルベリヒを引きずりながら登場)
●アルベリヒ●
卑怯な神々め、おれをどうするつもりだ?
●ローゲ●
命まで取ろうとはいわないよ、身代金を支払ってくれればね^^
●アルベリヒ●
身代金だと、くそっ!
●ヴォータン●
おまえが貯めこんだ宝を全部差し出せば、解放してやらんこともない。
●アルベリヒ●
宝を全部だと?強欲な神々めが!(怒)
●ヴォータン●
拒否するなら、わしにも考えがあるぞ。
●アルベリヒ●
ここはじっと辛抱するしかないか…
この指環さえあれば、宝などまたすぐ集めることができるのだからな。
●ヴォータン●
宝を差し出す気になったか?
●アルベリヒ●
わかった、いまいましいが、宝は全部くれてやる!
奴隷どもに運ばせるから、この手を自由にしてくれ。
(ローゲ、アルベリヒの右手の縛めを解く)
●アルベリヒ●
奴隷ども、ご主人様の命令だ!
ニーベルハイムの宝を全部ここまで運んで来い!
(地下世界の住民が夥しい黄金を持って現れ、広場にうず高く積み上げる)
●アルベリヒ●
強欲な神々よ、これで満足か?
●ローゲ●
まだ宝はあるじゃないか、ほら!
(ローゲ、アルベリヒの隠れ兜を奪い取り、黄金の山の上に投げる)
●アルベリヒ●
隠れ兜まで持っていくのか?この泥棒野郎!
●ローゲ●
口のきき方には気をつけた方がいいと思うよ^^
●アルベリヒ●
まあいい…兜はまたミーメのやつに作らせればいいのだ。
●ローゲ●
どうした、元気がないな?^^
●アルベリヒ●
これでおれは無一文だ。元気もなくなろうというものだ(´д`)
さて、身代金は支払ったぞ。そろそろおれを解放してくれてもいいだろう?
●ヴォータン●
そうはいかん。おまえはまだ指環を持っているではないか。
その指環も渡してもらおう。
●アルベリヒ●
指環?指環だと?
これだけは、頼む!持って行かないでくれ!
●ヴォータン●
そうはいかん。これはわしが預かっておく。
(ヴォータン、アルベリヒの指から指環を抜き取る)
●アルベリヒ●
それは、おれが愛を捨てる代償として、血の出る思いで手に入れた指環だぞ!
おれの命そのものといってもいい!
その指環を、ヴォータン、おまえは無慈悲にも奪い取るというのか!
(ヴォータン、アルベリヒの叫びにはまるきり無関心に、指環を自分の指にはめる)
●ヴォータン●
ふむ、見事な輝きだ。これはおまえにはもったいない。わしにこそふさわしい^^
ローゲ、もういい、その醜い小人を放してやるがいい。
●ローゲ●
いいんですか?
こいつ、きっとあなたに復讐しますよ?
●ヴォータン●
指環の力を持たぬこいつなど、恐れるに足りん。
いいから逃がしてやれ、目障りだ。
(ローゲ、アルベリヒの縛めを解く)
●アルベリヒ●
忘れるな、強欲な神々よ、おまえたちは必ず後悔するぞ!
その指環に、おれは呪いをかけてやる!
その指環を持つ者は、無残な死を遂げることになるのだ!
(アルベリヒ、地下世界に戻って行く)
●ローゲ●
後味の悪い捨て台詞でしたね^^;
●ヴォータン●
負け犬の遠吠えだ、気にすることはない。
●ローゲ●
ヴォータン、その指環はラインの乙女たちに返してやると約束したんですが。
●ヴォータン●
なにを馬鹿なことをいっている。
低能のラインのガキンチョどもにこの指環の価値がわかるものか。
返すなどととんでもない、それこそ豚に真珠ではないか!
●ローゲ●
それを返さないと、私の信用ガタ落ちになるんですけどねぇ…(>_<)
(フリッカ、フロー、ドンナー登場)
●フリッカ●
宝を手に入れて戻ってくれたのね、安心しました。
これでフライアも救われるわ^^
(ファゾルトとファフナーがフライアを連れて登場)
●ファゾルト●
約束の時間だ、報酬は用意できたか?
●ヴォータン●
見てのとおりだ、黄金は好きなだけもって行け。ただしフライアは解放してもらおう。
●ファゾルト●
フライア、ついにおまえと別れねばならんのか…
●ファフナー●
兄貴よ、感傷に浸っている時ではないぞ。報酬をきっちり受け取るのだ!
●ファゾルト●
わしにはフライアを諦めきれん。
神々よ、わしとフライアとの間に黄金を積み重ねて、フライアの姿を隠してくれ。
フライアの姿を隠せるだけの黄金を報酬として要求する!
●ローゲ●
ずいぶんと欲張りな要求だね(^_^;)
●ヴォータン●
奴のいうとおりにしてやるがいい。
(ドンナーとフロー、黄金を運び、ファゾルトとフライアの間に積み上げる)
●ファフナー●
まだだ、まだフライアが見えるぞ!そっちの隙間を埋めろ!
(ドンナーとフロー、いわれたとおりに黄金を積む)
●ファフナー●
おい、こっちの隙間が埋まってないぞ!こっちに黄金を積んでくれ!
(ドンナーとフロー、いわれたとおりに黄金を積む)
●ファゾルト●
ああ、フライアの愛らしい姿がすっかり隠れてしまった…(>_<)
●ドンナー●
もう宝はないぞ!
●ファフナー●
だめだな、まだフライアの髪の毛が見えてるじゃないか!
●ローゲ●
しかたないですね、これも使いましょう。
(ローゲ、隠れ兜を宝の山の上に投げる。フライアの髪が隠れる)
●ファゾルト●
フライアよ、これでいよいよお別れか…(>_<)
待て、まだ黄金の隙間から、フライアの美しい瞳が見えるぞ!
●ファフナー●
その隙間をふさいでくれ!
●フロー●
もう宝はないといってるだろ!
●ファフナー●
その指環で隙間をふさいだらどうだ?
●ヴォータン●
指環だと?馬鹿なことをいうな、これだけは渡せない!
●ファゾルト●
それなら、すべてはご破算だ!フライアは連れて行くぞ!
●フライア●
助けて、お姉さま、フロー!
●フリッカ、ドンナー、フロー●
ヴォータン、その指環を渡してください!フライアを救ってください!
●ヴォータン●
だめだ、誰が何といおうと、これはわしのものだ!
●フリッカ、ドンナー、フロー●
ヴォータン、お願いです、指環を!
(突如、大地が割れ、エルダが姿を現す)
●エルダ●
ヴォータン、お聞きなさい、私の言葉に耳を傾けるのです!
●ヴォータン●
おまえは何者だ?地面の中から、いったい何をしに現れたのだ?
●エルダ●
私ははるか太古からこの世界のすべてを見聞している、大地の女神エルダです。
私の3人の娘は過去、未来、現在を糸に紡いでいます。
よほどのことでもない限り、私は娘たちを遣わすのですが、今回は特別の事態です。
私自身が直接あなたに警告するためまいりました。
お聞きなさい、ヴォータン、神々に危機が迫っています!
それを伝えるため、私はしばし目覚めたのです!
●ヴォータン●
神々の危機だと?いったい何の話だ?
●エルダ●
その指環には恐ろしい呪いがこめられています…
指環を手放しなさい…災いから逃れるのです…
●ヴォータン●
どういうことだ?もっと詳しく話してくれ!
●エルダ●
もう時間がない…神々の黄昏が迫っている…
(エルダ、再び大地の中へ沈んでいく)
●ヴォータン●
エルダは何を伝えようとしたのだろうか…?
●フリッカ●
気味悪いわ、早くその指環を始末してくださいな、あなた!
●ヴォータン●
うむ…それもやむを得まい。
エルダの言葉の意味はわからなかったが、これは手放した方がよさそうだ。
巨人ども、この指環はおまえたちにくれてやろう!
(ヴォータン、指環を宝の山に投げる)
●ファフナー●
この指環はおれがもらっておこう。
●ファゾルト●
なにをいう、これはフライアの瞳と引き換えたものだ。当然わしのものだ!
●ファフナー●
兄貴だからって、宝を独り占めにしようっていうのか?ふざけるな!
(ファゾルトとファフナー、宝を巡って争う。ファフナー、棍棒の一撃でファゾルトの脳天を砕く)
●ファフナー●
お人よしの兄貴よ、そこで手に入れそこなった女の夢でも見てるがいい。
宝はおれがしっかり守ってやるよ(冷笑)
(ファフナー、すべての宝を袋に積めて立ち去る。一部始終を呆然と眺める神々)
●ドンナー●
どうやら、雰囲気が悪くなったようですな。
ひとつ、雷雨を呼んで空気を清めますか。
(ドンナー、高い岩の上に立ち、ハンマーを揮う。雷鳴が轟き、激しい雨が降る。雨がやみ、空が晴れ上がる)
●フロー●
私が虹を呼ぼう。あの城に、虹の橋を架けましょう。
(フローが虹を呼ぶ。ヴァルハラに虹の橋が架かる。神々はその橋を渡り、城に向かう)
●ヴォータン●
この城を、わしは「ヴァルハラ」と名づけよう。
●フリッカ●
それはどういう意味なのです?
●ヴォータン●
恐怖を克服したわしの勇気がそう名づけたのだ。
いつかおまえにも、その意味がわかる時がこよう。
●ローゲ●
恥知らずな神々だな。こんな連中と心中するのは真っ平だ。
今はヴォータンに押さえつけられてはいるが、もともとおれは自由な炎。
いつの日にか、おれの炎でこの世界を焼き払ってみたいものだ。
(ライン河の方角から、ラインの乙女たちの嘆きの歌声が流れてくる)
●ヴォータン●
あのうっとうしい泣き声は何事だ?
●ローゲ●
ラインの乙女たちが、黄金を奪われて悲しんでるんですよ。
●ヴォータン●
耳障りだ。すぐにやめさせろ。
●ローゲ●
おまえたち、よく聞くがいい!神々の長、ヴォータンの思し召しだぞ!
もはや失われた黄金を嘆くのはやめて、神々の恩恵に浴して人生を楽しめ!
●ヴォータン●
はっははは!
(再び流れてくるラインの乙女たちの嘆きの歌声)
●ヴォータン●
くそいまいましいニンフどもめ!
(ヴォータンと神々、虹の橋をわたってヴァルハラに入城して行く。幕)