■■ 可 能 性 ■■

「みなさん、将来の夢は大きく持ちましょう。何度失敗しても、へこたれずに、諦めないで・・・。」ランドセル背負ってた頃までは、ずっとそう教えられて来た。そして、それを素直に信じて夢を追っていた。 高校受験を迎える頃には、甘い夢を捨てろと諭されるようになっていた。「お前に出来るわけないだろ・・・、絶対無理だよ・・・、お前の気持ちは解るけど、現実はそんな甘いものじゃないぞ・・・。」
こんなふうにして、僕達は厳しい現実社会の中で「負けない生き方」を教え込まれてきた。自分が秘めているあらゆる可能性が、他人の判断によって評価され、歩くべき道が提示されてゆく。「お前には絶対この道が向いている・・・、自分で思っている程、周りはそこまで高くお前を評価していない・・・、いいかげん目を覚ませ、現実を受け止めろ。」社会に出て歩いてゆく「道の選択」を迎えている若者が仮に一〇〇人いたとして、もうこの段階で既に半分以上の者はアドバイス通りの選択をしていることは間違いなく、まだ決断しかねていた者たちも「社会人の一先輩として、アドバイスしているんだ・・・、お前のためを思って・・・。」この殺し文句で残りの殆どが、そのアドバイスに従ってゆく。そして、周囲の評価を全く無視した道を選択した者たちは「身の程知らず」、「社会不適合者」、そんなニュアンスを総称して「ガキ」と呼ばれた。僕もその「ガキ」の中の一人だった・・・。
俺の可能性・・・、俺に何が何処まで出来るか・・・。俺自身が解らないというのに、親しくもない他人が何で俺以上に俺のことを知っているっていえるんだ。自分自身じゃないからこそ、色々冷静な見方が出来て、本人以上にその相手を理解することが出来るってのかい。 ・・・それがごく普通だって? それ、本気で言ってるのか? ・・・「普通」の人間だったらみんなそうだって言うのかい? ・・・もしそれが本当に「普通」なんだとしたら、俺はかなりの「異常者」だぜ。だって、今こうしてアンタと向き合って話をしてるってのにさ、俺には「アンタ」のことが何ひとつも見えてこないんだから・・・。少なくとも、俺はアンタよりアンタを知らないし、理解出来ないよ・・・。