シベリウス/交響曲第6番 ニ調 作品104
(Jean Sibelius : Symphony No.6 in D, Op.104)

第6交響曲は、この作曲家の7つの交響曲の中でも、第3交響曲と並んで演奏機会に恵まれない作品と申さねばなりません。

1915年に初演され、2度の改訂を経て1919年に現在の形で完成された第5交響曲は、その雄大で豊穣な響きによって、かねてから第2交響曲に心酔していた人々はもちろん、世界中の多くの聴衆の心をつかみました。
ところが、第6交響曲の穏やかでことさらなドラマ性を排した簡潔な表現は、当時の聴衆の多くには、いくぶんかの戸惑いをもたらしたようでございます。

シベリウスが第6交響曲に本格的に着手したのは1914年の秋ですが、最初の構想はすでに1912年前後、第5交響曲の着手当時からあり、およそ10年間にわたって次第に形を整えられ、ようやく1923年に書き上げられました。作曲の途中では2番目のヴァイオリン協奏曲にするというような考えもあり、さまざまな紆余曲折をたどった末に、最終的に4楽章制の、外見上は伝統的な線に沿った交響曲となったのでございます。
初演は1923年2月19日、シベリウス自身の指揮によってヘルシンキで行われました。この交響曲のもたらした「静かな戸惑い」は後年まで持続し、セシル・グレイやコンスタント・ランバートのように作品の純粋性や完成度の高さを称揚する人々のいる一方で、この作品には積極的な存在意義を見出し難い、という立場の批評家も少なくありませんでした。1950年代に至っても、イギリスの批評家ネヴィル・カーダスは「地方主義の穏やかなこだま」の一言のもとに、この交響曲を切り捨てております。
とはいえ、今日では第6交響曲は第7交響曲や「タピオラ」とともに、シベリウスの創作活動の最後期を飾る傑作として認められていると申してよろしいでしょう。

この交響曲は従来の調性に拠らず、教会旋法のひとつ、Dを終止音とするドリア旋法に基づいております。

したがいまして、この曲を「交響曲第6番ニ短調」とするのは正しくなく、単に「交響曲第6番」または「交響曲第6番二調」と称ぶべきでございましょう。
4つの楽章はアレグロの両端楽章、緩徐楽章の要素をもつ第2楽章、スケルツォ的性格の第3楽章と、形の上では伝統的な楽章構成を踏襲しておりますが、各楽章をよく見てみますと、ソナタ形式や三部形式といった従来の形式にそのまま分類できるものではなく、息の短い動機が生成発展しながらその結果としてひとつの大きな構造を形成するというような、独自の構成原理をもっていることに注目すべきでありましょう。
教会旋法の使用とともに、この曲では複調や執拗なオスティナート、大胆な不協和音など、随所に20世紀の音楽らしい手法が駆使されておりますが、それらが際立って目立つことなく、全体の色調に違和感なく融け込んでおります点も、いかにもシベリウスらしい書き方でございます。
シベリウスは「みんながいろんな色のカクテルを作り出しているときに、私は冷たい真水を提供したに過ぎない」というようなことを語ったそうでございますが、この第6交響曲など、まさに「清冽なコップ一杯の真水そのもの」という気がいたします。

このたび、「あそびの音楽館」では、第6交響曲を2台のピアノ用にアレンジしてみました。
原曲の面白味はほとんど残っていない編曲ではございますが、暇つぶしにでもお聴きいただければ幸甚でございますm(__)m

(2012.4.26〜5.12)

交響曲第6番 ニ調 作品104・全曲連続再生 

第1楽章:アレグロ・モルト・モデラート(I. Allegro molto moderato) 
第2楽章:アレグレット・モデラート(II. Allegretto moderato) 
第3楽章:ポコ・ヴィヴァーチェ(III. Poco vivace) 
第4楽章:アレグロ・モルト(IV. Allegro molto) 

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◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集
◇編曲・MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma