シベリウス/交響曲第1番 ホ短調 作品39 (Jean Sibelius : Symphony No.1 in E minor, Op.39) | |
シベリウスは番号の付いた交響曲を生涯に7曲残しておりますが、その最初の作品、交響曲第1番は1899年の作で、第2番以降はすべて20世紀になってから書かれております。作風の面でも、第1番にはチャイコフスキーやボロディンに代表される19世紀ロシア交響曲の影響が感じられ、その後の交響曲、特に第3番以降のきわめてユニークな境地に達しているとは申せません。 とはいえ、単独に見てみますと、初期の第1と第2はシベリウスの交響曲の中ではもっとも演奏回数も多く、また一般にも親しまれております。 |
それと申しますのも、この2つの交響曲には、豊かな旋律とリズム、壮大なスケール感があり、聴く者を惹きつけてやまない新鮮な魅力に溢れているからでございましょう。
第1交響曲の完成は作曲者34歳の年、有名な「フィンランディア」と同時期でございます。すでに「クレルヴォ交響曲」や「トゥオネラの白鳥」を含む「四つの伝説(レミンカイネン組曲)」などでフィンランドを代表する作曲家として認められ、政府からの終身年金も受給される立場にいたシベリウスですが、初めての純器楽のための交響曲ということで、相当に力を入れて作曲したようでございます。 |
(比較のため、ボロディンの主題はト長調に移調しております) |
第1交響曲は伝統的な4楽章制をとり、管弦楽の編成も19世紀後期ロマン派のごく標準的なものとなっております。が、ベートーヴェンの第1交響曲がハイドンの影響下にありながら、紛れもなくベートーヴェンふうであるのと同様、シベリウスの場合も主としてロシアの交響曲をお手本にしながらも、作曲者の持ち味は明確に打ち出されていると申してよろしいかと思います。 第1楽章の展開部から再現部へのきわめて有機的な融合、第4楽章の特異な二部形式など、第2交響曲以降につながる構成の実験の萌芽はすでに明らかで、オーケストレーションの面でも弦楽器や金管楽器に独自の使用法が試みられております。 古今の「第1」という番号をもつ交響曲の中でも、この曲はたいへん面白い作品のひとつではないかと愚考いたしますm(__)m
チャイコフスキーと大差ない編成とはいえ、管弦楽の使い方がユニークなため、1台ピアノでの連弾編曲はとてもできず、2台のピアノ用にアレンジいたしました。 |
(2008.2.3〜2.28) |