サティ/5つの夜想曲
(Erik Satie : Cinq Nocturnes)
1919年の8月から11月にかけて書かれた作品。サティはこの年53歳、さらに6年ほどの余命がありますが、委嘱による大型の作品の仕事が増えたこともあり、ピアノのための曲集としてはこれが最後のものとなりました。
本来は6曲でまとめられる構想だったようですが、最後の第6番は草稿のみで完成されることなく、結局「5つの夜想曲」として出版されました。
ピアノ曲はサティにとってデビュー時からもっとも身近なジャンルであり、その奇妙な曲名の数々で作曲者の知名度を増すことに貢献しましたが、最後の曲集名が「夜想曲」というごくありふれたものなのは、逆に少し違和感があったりします。

5曲はすべて、基本的に緩やかなテンポ、なだらかな旋律、8分の12拍子で書かれております。一見するとショパン以来の伝統的な夜想曲のスタイル、すなわち分散和音的な伴奏の上でメロディが歌われるという形をとっておりますが、旋律は声楽的というよりはむしろ器楽的、さらに申せばサティ的なものでございます。

各曲には表題は一切なく、単に番号が付されているだけでございます。サティにしてはあまりに尋常な態度ですが、これが生涯も終わりの時期にさしかかったサティの心境なのでございましょうか。
ただし、晩年には「家具の音楽」やオペラ、バレエ、さらには映画のための音楽など種々の作品が書かれており、サティの関心の中心はそのようなジャンルに向かっていたのかもしれません。

(2021.11.7〜11.12/Jun-T)

夜想曲 第1番(Nocturne I) 
夜想曲 第2番(Nocturne II) 
夜想曲 第3番(Nocturne III) 
夜想曲 第4番(Nocturne IV) 
夜想曲 第5番(Nocturne V) 

5つの夜想曲・全曲連続再生 

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◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma