3つのジムノペディ
(Erik Satie : Trois Gymnopedies)
サティの全作品中でも、もっとも有名なのがこの「3つのジムノペディ」、とりわけその第1番でございます。
「3つのサラバンド」、「4つのオジーヴ」に続き、サティ22歳の年の1888年に書かれた小品ですが、それまでの2作に示された旋律的・和声的な革新性とは打って変わって、簡素なハーモニーの上になだらかなメロディが淡々と流れるという、きわめてシンプルな書法に徹しております。
この作品が書かれた頃は後期ロマン派全盛の時代と申してよく、フランスではフランク、サン=サーンス、マスネ、フォーレらが、ドイツ・オーストリアをはじめとする他国ではブルックナーやブラームス、チャイコフスキー、ドヴォルザーク、グリーグなどが現役で活動していた時期で、こうした人々の作品と並べてみると、サティの音楽の特異さは際立っております。
その最大の特徴は、革新的な音づくりとは裏腹に、この時代の感覚からすると極端に自己主張が薄い、という点にあるかと存じます。それは今日的な「環境音楽」に通じるもので、このような発想は、当時としては驚異的なユニークさと申し上げなければなりません。
「ジムノペディ」は他のサティ作品同様、ドビュシーやラヴェルなど一部の音楽家に大きな感銘を与え、ドビュッシーなどは後年このうちの第1番と第3番にオーケストレーションを施し、サティの名を一般に広めようと努めさえしております。

「ジムノペディ」という名は古代ギリシアの祭典に由来するといわれますが、3曲とも3拍子の定型リズムによる緩やかな音楽で、大きな起伏はまったくなく、ただ平坦に流れる静かな音楽でございます。
なお、各曲に書き込まれたテンポ・発想記号はサティにしては珍しくまともなものとなっております。

第1番 ゆっくりと苦しみをもって
第2番 ゆっくりと悲しみをもって
第3番 ゆっくりと重々しく

この作品が世間一般に知られるようになったのは1960年代になってからですが、BGMのようでありながら不思議に心を捉える魅力があり、今日では知らない人のいないほど有名な曲になっております。

(2021.4.29〜5.1/Jun-T)

3つのジムノペディ・全曲連続再生 

ジムノペディ 第1番(Gymnopedie I) 
ジムノペディ 第2番(Gymnopedie II) 
ジムノペディ 第3番(Gymnopedie III) 

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◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma