「グノシェンヌ」は「3つのジムノペディ」に続いて作曲された曲集で、当初は「3つのグノシェンヌ」として発表されましたが、作曲者没後に発見された3曲を合わせて、今日では「グノシェンヌ」は6曲から成る曲集となっております。
第1番から第3番までは1890年、第4番は1891年、第5番は1889年、第6番は1897年の作曲で、第6番のみ完成時期がだいぶ遅くなっておりますが、基本的にはどの曲も、変化の少ない一定のリズムによる伴奏の上に一抹の哀感を湛えたメロディが流れる、という形をとっております。
1890年頃と申しますと、ブルックナーやブラームス、あるいはチャイコフスキーやドヴォルザークが現役で活動していた時代で、マーラーやドビュッシーはまだ広く知られる以前でございます。
こうした時代に、今日的に申せばBGMや環境音楽に近いような発想の音楽を作ったサティの才能は、まさに異色としか申しようがございません。
曲想ばかりでなく、記譜法もだいぶ変わっておりまして、第5番を除く5曲には小節線もございません。後にサティは調号も外してしまうのですが、そうした当時としては一種奇矯な書法を早い時期から試みている点から見ても、サティの独自性は筋金入りと申してよろしいでしょう。
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