フランク/大オルガンのための6作品
(C. Franck : 6 Pièces pour grande orgue)

よく知られておりますように、フランクは大器晩成型の人でした。1842年、20歳のときのデビュー作「3つのピアノ三重奏曲」で注目を集め、リストにも評価されながら、その後はぱっとしない時期が続き、デビューから10年後に満を持して発表したオペラ「頑固な召使い」が失敗に終わると、フランクは作曲に見切りをつけて演奏家・教育者としての生き方に道を見出そうとします。

ピアニスト・作曲家としてスタートしたフランクにとって、オルガンは専門の楽器ではありませんでしたが、教会オルガニストになるために懸命に勉強して、30歳代にはオルガニストとしての評価も高まりました。
1858年、フランクはサン・クロチルド聖堂のオルガニストに就任します。その後まもなく、この教会には新式かつ大規模なオルガンが設置され、この楽器がフランクの創作意欲を大いに刺激することになりました。
こうした状況で久しぶりに書かれた本格的な作品が、「大オルガンのための6作品」でございます。

「大オルガンのための6作品」は1860年頃から1863年にかけて作曲されました。フランクがその真価を発揮するのは1870年代に入ってからですが、「6作品」はそれ以前のフランクの最重要作というべき地位を占めております。
6つの曲は独立性が強く、全体でまとまったひとつの作品として構想されたものではありません。それぞれの曲に個別の作品番号が与えられていることも、その証左となります。ちなみに、フランクはデビューからおよそ20年ほどの期間に書いた曲には作品番号を付けておりますが、1860年代の半ば頃からその習慣を捨てております。

「大オルガンのための6作品」は以下のような曲から成ります。

@ 幻想曲(作品16)
1860年頃作。ハ長調。緩・急・緩の3つの部分で構成され、それぞれの部分は独立性が強く、通常の三部形式とは異なります。ただし第3部分の前半には第2部分の楽想が引用され、繋がりを円滑にしております。

A 交響的大曲(作品17)
1863年作。嬰ヘ短調。全6曲中もっとも大規模な作品で、単一楽章ソナタの形をとります。3つの部分から成り、序奏付きアレグロ楽章、スケルツォ的部分を含む緩徐楽章、総合的な終楽章というような姿を見せます。循環形式が明らかに示されており、後年のニ短調交響曲のひな型とする見解もございます。アルカン(Charles Valentin Alkan;1813〜1888)に献呈されております。

B 前奏曲、フーガ、変奏曲(作品18)
1862年作。ロ短調。6曲の中ではきわめてよく知られた曲。前奏曲は憂愁を帯びた魅力的なもので、簡潔なフーガを経て、変奏曲では再び前奏曲の旋律が扱われます。サン=サーンス(Charles Camille Saint-Saëns:1835-1921)に献呈されております。

C パストラール(作品19)
1863年作。ホ長調。構成的には全曲中もっともシンプルな三部形式で出来ております。第1部と第3部は曲名通り牧歌的な雰囲気、中間部は活発な舞曲ふうの音楽です。

D 祈り(作品20)
1860年頃作。嬰ハ短調。変則的なソナタ形式。再現部には豊かな情緒的盛り上がりが用意されております。

E フィナーレ(作品21)
1862年作。変ロ長調。全般的に快速調のロンド・ソナタ形式ふうの音楽。符点のリズムが特徴的な主題を中心に、コーダの音響的頂点を目指して突き進みます。

ここでは、この作品をピアノ二重奏、またはピアノ連弾で演奏してみました。各曲の編曲者は、以下のようになっております。

幻想曲(2台ピアノ:H. デュパルク編曲)/交響的大曲(2台ピアノ:J. グリゼ編曲)/前奏曲、フーガ、変奏曲(ピアノ連弾:A. ドゥコー編曲)/パストラール(ピアノ連弾:G. ショワネル編曲)/祈り(2台ピアノ:J. グリゼ編曲)/フィナーレ(ピアノ連弾:Jun-T編曲)

ピアノで演奏された「大オルガンのための6作品」、お楽しみいただければ幸甚です。


 幻想曲(Fantaisie, Op. 16) 
 交響的大曲(Grande pièce symphonique, Op. 17) 
 前奏曲、フーガ、変奏曲(Prèlude, Fugue, Variation, Op. 18) 
 パストラール(Pastorale, Op. 19) 
 祈り(Prière, Op. 20) 
 フィナーレ(Finale, Op. 21) 

 大オルガンのための6作品・全曲連続再生 

◇「あそびのピアノ連弾」に戻ります◇
◇編曲:H. デュパルク/J. グリゼ/他 ◇編曲・MIDIデータ作成:Jun-T ◇録音:jimma