制作方法について述べてみますが、あまり詳しくない人は「ふ〜ん!いろいろあるんだな・・・」ってな感じでお付き合いいただければと思います。
当サイトで公開しているクラシック音楽のMP3は全て完全リアルタイム入力で制作しています。
リアルタイム入力とは通常のデスクトップ上のスコアリングや打ち込みとは違い、実際にMIDIキーボードで鍵盤上で演奏し演奏情報をMIDIシーケンサに記録していきます。
従ってクオンタイズ機能(拍と音符の縦の線を揃える機能)も全く使用しませんので打ち込みではなく演奏と思っていただいても良いと思います。
なぜなら、そのクオンタイズ機能を使用してしまった時点で完全リアルタイム入力で演奏している意味はなくなってしまい、自分で制作したのではなく機械に制作してもらっているような気になるからです。
例えば、MIDIというのは「どのキー(鍵盤)をベロシティ(どれくらいの強さで)ノートオン(いつ打鍵し)ノートオフ(いつ離したか)」という情報を小節ごとに数値化してデジタル処理しシーケンサソフトなどでデータ化して保存します。
リアルタイム入力というのは実際に鍵盤上で演奏しそれらのデジタルな数値を全て自動的に作り出すわけです。
ただ、リアルタイム入力というのは決して「楽をする」ためにあるのではなく「より音楽的、実演に近く」するための高度な方法と思っています。
もち、サンプル音源自体はあらかじめ用意された波形データであるため、完全に自分の演奏に近づけるのには限界があるということは前提です。
しかしながら、リアルタイム演奏は例えばヴァイオリンのアタック感や管楽器のタンギング感、それとは逆にレガート感などもある程度表現することが出来ます。
また、アーティスト達が演奏する際には音符にキッチリと当てはめて演奏することはあまりありません。
例えば、三連音符、16分音符など、出だしの音は少し長めに弾いて反動をつけてみたりしますね。
音符にキッチリ当てはめ過ぎるとやはり機械的な演奏になってしまいます。
そういった場合にもやはりリアルタイム演奏だと自分のイメージした演奏が出来ます。
これらをスコアリング的な方法でシーケンス出来ないわけではないですが、もし仮にしようとするとオーケストラなどの場合は数十パートのチャンネルなどに一音ずつ数値などの入力調整しなければならないため、とてつもなく時間がかかります。
そういったことを考えるとリアルタイム入力というのは過去にピアノ、エレクトーン、オルガンなど、鍵盤楽器を勉強していた人にとってはすごく強みになります。
そして、完全にすべてのパートを独立させ・・・(といっても弦楽器に関してはストリングスの様な複数でユニゾンした音をヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、バスというような分け方になるので完全独立というと語弊があるかも知れません。)
例えば、管楽器に至っても1stと2ndを別々のチャンネルで独立演奏しPAN設定(2チャンネルの場合の左右の位置)も独立させています。
分かりやすく言えば、PAN設定を10レベルほど変えることによって奏者の座っている椅子の位置を指定出来、オーケストラの立体感や味を最大限に引き出そうとしています。
これはオーケストラの写真などを見ながらPAN数値を決めています。
「そんなところまで誰も聴いていないよ!」と言われそうですが、これは制作者の性格、拘り、なのでどうしょうもないのです(f;^ ^)
しかし、MIDIで使用しているサンプル音源などの場合は同じ音色でユニゾン演奏(複数パートの同じメロディライン)させようとすると、波長の関係などで音に深みがなくなったり貧弱、薄っぺらな、全く別の音色に変化してしまいます。
これはMIDIに携わった人であればだいたい経験があると思います。
そういった場合にもPAN設定により音の位置関係を細かく分けることで少しでも音色の悪質な変化を避けることも理由のひとつです。
では、「弦楽器やティンパニ、トライアングルなどのトレモロはリアルタイム入力では限界があるよね?」
と言われるかも知れません。
弦楽器の場合は32分音符の場合はランダムに弦に弓を擦りますのであらかじめトレモロされたサンプル音源を使用することが多いです。
ただ、16分音符のトレモロの場合は32分音符のようにランダムに擦るのではなく1拍につき4つの刻みをキッチリと収めなければいけません。
その場合は4部音符=60くらいのテンポであれば演奏可能であるため演奏後に規定のテンポに変更し、それらしく聞こえるようにしています。
ティンパニや太鼓類、などのトリルはスプリット法を使います。
スプリット演奏とは・・・MIDIキーボードの機能のひとつで、鍵盤の領域をふたつに分けて左手用と右手用の演奏を別の演奏当てはめる機能です。
左右を同じ音色に設定し、同じオクターブに設定することで実際の打楽器のようにトレモロ演奏が可能になるし、スフォルツァンド、アクセント、クレッシェンド、ディミニェンドなども自在になります。
例えば、ティンパニなどでも曲想によってトリルの速さを変えていかなければ納得のいく演奏にはなりませんがそのスプリット機能を使えばリアルタイム入力で自在になります。
例えば、クレッシェンドする場合はトリルもだんだん早くしていくのが一般的ですがリアルタイム入力であればそれが可能ということです。
ベロシティースィッチに対応した音源も使用しています。
やはりリアルタイム入力が出来ればベロシティースイッチを使わない手はありません。
ベロシティースィッチとは・・・、鍵盤を叩く強さによりレイヤーされた2つ以上の音色を変化させることです。
例えば、金管楽器に限りませんがわかりやすいので例えてみます。
トランペットやトロンボーンなどppなどで演奏するとソフトで暗い音色になります。
ffで演奏するとやはり息の速さも変わるためアタックをはじめ、張りのある音色に変えなくてはいけません。
もちろんこれは、弦楽器や打楽器、またピアノなどの鍵盤楽器にも言えることです。
それをMIDIキーボードでも表現可能にするため、打鍵速度により2種類以上の音をレイヤーさせるようプログラムされているサンプル音源があらかじめ市販されています。
中にはピアノの音源でひとつのキーにつき16以上もレイヤーされているのもあります。
pppp、ppp、pp、p、mp、mf、f、ff、fff、ffffといった?・・・あれっ?まだ足りねぇな〜。
やはり高価である上に、それに対応したソフトサンプラーやPCなどの性能も上げなくてはいけなくなるため現在のところは手が届きませんが気になる一品ではありますよね。
もし使われた方は是非、使い心地を教えていただければと思います。
はっきりいいますと、海外の音色が使用しているサンプル音源はベロシティースイッチに対応しているものと対応していないものをバラバラに選抜しています。
対応していないものはff音源とpp音源などを別々のチャンネルに設定し、その変わり目がバレないように工夫をしたりと結構手間がかかる場合もあります。
とくにpとfの音源が別々のデロッパーなどで収録されたものであればかなり自然さも失せてしまうのも当然です。
音源の収録というのは制作会社によっては、演奏場所の残響度、楽器とマイクとの距離、演奏者の癖、ヴィブラートの速さ、などに相違が出てくるため苦労の種になります。
まぁ、あらかじめベロシティーでレイヤーされた音源が入手できればいいのですが使用しているサンプラーと音源の対応状況にもより難しいので現在のところは一貫性がありません。
また、限られた持ち合わせのサンプル音源を使用しているので完璧な実演とまでは行かなくともオーケストラや器楽曲の「モノマネ」のような感じで聴いていただくと結構楽しんでいただけると思います。
既存曲で修正したい箇所などまだいっぱいありますが一応手間をかけて制作していますので著作に関する事項を理解していただきPCなどに保存される際には大切に扱っていただければ幸いです。
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