「ニーベルングの指環」編曲について

「リング」をピアノで演奏することに何の意味があるのか?と問われれば、まぁたいした意味はない、と答えるしかございません。個人的にこの作品が好きで、自分で音にしてみたい、というだけの理由で始めたことでございます。
ところが、「ニーベルングの指環」は4管編成で書かれており、とうてい私どもの環境ではオーケストラの音での再現はできかねます。そこで、とりあえず現在の機材を使ってできる2台ピアノ版でやってみようということになりました。

ワーグナーの音楽の魅力の一端は管弦楽の表現力にあり、特に「リング」の場合、全面的に用いられているライトモティーフの手法は、オーケストラの音色を俟って初めてその最大の効果を発揮するように計画されております。
その点から見ましても、この作品をピアノで演奏することは、最初からその魅力の大きな部分を自ら捨てる行為になることは明らかでございます。
とはいえ、「リング」が旋律と和声の宝庫であることも事実でございまして、この部分に関しては、ピアノでもある程度まではその魅力をお伝えできるのではないかと思います。

なお、この作品は従来のオペラのようなアリアとレチタティーヴォ式の構成になっておらず、幕全体がひとつの楽章のように切れ目なく進行いたしますため、編曲にあたりましては、特に曲の終結部分などに多少の加工を施している場合がございます。また、声楽の部分は、管弦楽部分の進行と照らし合わせながら、部分的に省略していることもございますので、その点ご了承願いますm(__)m


◇「ニーベルングの指環」に戻ります◇
◇背景画像提供:フリー写真素材Canary様