◇司令官◇
(1877年作/歌詞:A.ゴレニシチェフ=クトゥーゾフ/訳詩:Jun-T)

戦場、そこでは雷(いかずち)が轟き、

閃光が走り、焔が地を灼(や)き、

大砲が吼え、その砲身は熱で火照る。

軍勢は戦場を駆け巡り、軍馬は大地を蹴立て、

河の流れは血で赤く染まる。

日輪は燃え、兵士たちは力を振り絞る。

恐るべき怒りに駆られ、兵士たちは進撃する。

戦闘は続き、やがて日は翳り始める。

それでも戦士たちは、休みなく戦い続ける。

やがて闇の帳(とばり)が下り、戦場は静まる。

兵士たちは矛を収め、激闘の場を去る。

静寂が支配し、傷ついた兵士たちの呻き声が

沈黙と夜のしじまをかき乱すだけ。

不気味な月の光に照らされて、

逞しい軍馬にまたがり、骸骨の身体を白く輝かせながら、

恐るべき「死」が、その雄姿を現す!

死にゆく者たちの苦しげな呻きと祈りの声を聞き、

「死」は満足げに頷く。

いまやわが領土となった戦場を闊歩し、会心の微笑を浮かべつつ、

「死」は凄惨な虐殺の跡を眺める。

やがて「死」は丘に登り、戦場を見下ろしながら、

ふたたび笑みをもらす。

そして、運命の集合ラッパの音のように、

「死」の声がすべての戦死者に号令をかけるのが聞こえる……

「死」:戦いは終わりだ。

    なぜなら、いまや私が勝利者だからだ!

    勝った者も負けた者も、等しく私が支配する。

    生あるときには敵対したおまえたちも、

    死の前では平等である。

    みな共に立ち上がるがよい、閲兵のために整列するのだ。

    厳粛な足取りで行進せよ。

    わが眼前では行軍を停止し、すべての望みを捨てよ。

    私はわが全部隊を記録にとどめよう。

    そして、おまえたちの白骨は土に還るのだ。

    生から解き放たれ、柔らかく生い茂る草の下でまどろむがよい。

    歳月は過ぎゆき、人はおまえたちのことを忘れ、

    やがて、おまえたちの眠る場所を知る者はなくなる。

    だが、私は忘れはしない!

    私はおまえたちを訪れ、真夜中に盛大な饗宴を催そう。

    おまえたちはこの場所に横たわり、眠り続けるのだ。

    私はそれをおまえたちに命じる。

    踊りながら、私はおまえたちがけっして死から蘇えることのないように、

    おまえたちの頭上の大地をしっかと踏みつけてやるのだ!

(2005.7.16)

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