◇トレパーク◇
(1875年作/歌詞:A.ゴレニシチェフ=クトゥーゾフ/訳詩:Jun-T)

人っ子ひとりいない平原と森。

気味悪い吹雪の音がすすり泣き、

道に迷い、疲れきった獲物を狙うかのように、

雪は一晩中舞い踊る。

見よ、彼方の暗がりの中で、

「死」がひとりの農夫を捕えようとしている!

泥酔した農夫と抱き合って踊り、歌いながら、

「死」は彼の耳もとで囁きかける…

「死」:おお、おまえは凍え、年老いている。

    酒はおまえをいい気分にし、

    寒さを感じることもなく、そこにごろ寝させる。

    吹雪の魔女がおまえを魅了し、

    おまえを森の中に連れ込んだのだ。

    哀れな農夫よ、生活苦に喘ぎ、上からは押さえつけられ、

    ひとり淋しく生きてきたおまえよ!

    休むがよい。

    おまえはここで、深く、果てしない眠りにつくのだ。

    見よ、私はおまえを柔らかい雪の寝床に横たえ、

    おまえの傍らで盛大に舞曲を奏でることにしよう。

    吹雪よ、軽やかに舞い、寝床を整えよ!

    ここへ来て踊れ、歌を披露せよ!

    夜を徹して歌え!

    暁が訪れるまで、この男を慰めてやるのだ。

    歌え、この睡魔に襲われた酔っ払いが、

    眠りとともに人生の幕を下ろすまで。

    聞け、暗闇よ、風よ、森よ、粉雪よ、雲よ、空よ。

    おまえたちは手を携えて柔らかい経帷子(きょうかたびら)を作り、

    この男の頭から足の先まで包んでやるがよい。

    心地よい夢を楽しむがよい、親愛なる農夫よ。

    見よ、花々の咲き誇る夏が来たのだ。

    穀物は豊かに実り、太陽は光り輝いている。

    鎌が揺れている。

    農民たちはみな、歌いながら刈入れに精を出しているぞ。

    鳥が空を翔けている……

(2005.7.5)

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