◇セレナーデ◇
(1875年作/歌詞:A.ゴレニシチェフ=クトゥーゾフ/訳詩:Jun-T)

紫色に輝く夜。

星々はまたたき、ひそやかに息づく春の宵。

夜のささやきが忍び寄り、病に冒された乙女は、

恐る恐る窓の外に耳を澄ます。

眠りは熱に潤んだ瞳を覆うことはなく、

乙女は生きる喜びを乞い願う。

やがて真夜中になると、乙女の祈りに応えるように、

「死」が優しいセレナーデを奏で始める。

「死」:暗い牢獄のような部屋に閉じ込められたまま、

    間もなくおまえは一人きりで消え去らねばならぬ。

    だが、心配は要らぬ。

    名もなきおまえの騎士を信頼するがよい。

    私がおまえを解放するために来たのだから。

    起きよ、そしておまえがいかに美しいかを知るがよい。

    鏡に映るおまえの貌は光り輝き、

    喜びに満ちて薔薇色に染まり、

    乳白色のヴェールが麗しい巻き毛を覆っている。

    おまえの瞳はサファイアの青、

    月の光のごとく私を見つめ、燃え上がる炎のごとく輝き、

    おまえの甘い息は、真昼のごとくあたたかい。

    いまや目覚めの時。

    私の求めをおまえは拒まず、

    おまえの内なる願望が私をここに呼び寄せたのだ。

    すなわち、おまえは私のもの、私の花嫁である。

    もはや至福の時は近い!

    華奢なおまえのその身体、悪寒に震えるその身体は、

    なんと魅惑に満ちていることか!

    おいで、私の歓喜に満ちた抱擁で、

    おまえの息の根を止めてやろう。

    私はおまえの恋人、その声をよく聞くがいい。

    さあ、来るのだ…

    いまこそ、おまえは私のもの!

(2005.7.4)

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