キュイ/25の前奏曲 作品64 (C.A.Cui : 25 Préludes, Op.64) |
19世紀ロシアの「力強い集団」、通称「ロシア五人組」の作曲家の中で、キュイはもっとも長寿(享年がボロディン53歳、バラキレフ73歳、ムソルグスキー41歳、リムスキー=コルサコフ64歳に対して、キュイは83歳。当時としてはかなりの長寿と申せましょう)で、またもっとも作品数の多い人でございます。 しかしながら、恵まれた長寿と大量の作品にもかかわらず、というよりむしろそれらに反比例するかのように、「五人組」の中でのキュイの作品はもっとも影が薄く、今日この人の作品が演奏されることは皆無ではないにしても極めて稀といわざるをえません。 キュイは14曲ものオペラを残しておりますが、その他の作品のほとんどは室内楽曲、ピアノ曲、歌曲や合唱曲などの声楽曲で、多くは小品でございます。しかもそれらの多くは、国民楽派的な個性的な作風とは縁遠いサロンふうの音楽でございまして、今後キュイの作品の音楽的価値が高騰する可能性は、まずないと申しても過言ではございません^^;
そのようなキュイの音楽ではございますが、チャイコフスキーも認めておりますように、深みはなくとも優雅で魅力的であることはたしかでございます。 曲は文字通り、25曲の前奏曲を集めた小品集でございますが、バッハの「平均率クラヴィーア曲集」やショパンの「24の前奏曲」に倣って、平均率の24の調性すべてを一巡する形になっております。ただし、キュイの曲ではハ長調で始まった曲集が24番目の調性で終わるのでなく、最後に初めのハ長調が戻ってきて全体を締めくくっております。「24の前奏曲」でなく「25の前奏曲」である所以でございまして、強いて申せばこの点がキュイの創意と申せば創意でございましょうか^^; なお、この曲集の調性は、次のような規則に従って並べられております。
ハ長調(調号なし)→ホ短調(ハ長調の長3度上の短調・#1個)→
すなわち、ハ長調で開始された曲集は、#を1個ずつ増やしながらロ長調(#5個)まで進み、次に規則どおり嬰ニ短調(#6個)へ進む代わりに変ホ短調(♭6個・嬰ニ短調の異名同音)に転じて、今度は♭を1個ずつ減らしていって(ただし、変ホ短調の次は平行調の変ト長調でなく、例外的に異名同音の嬰ヘ長調・#6個)、イ短調(調号なし)まで24個の調性を一巡したあと、規則どおりハ長調(イ短調の平行調)で振り出しに戻る、という調性配置をもっているわけでございます^^ |
◇あそびのエトセトラに戻ります◇ | |
◇背景画像提供:フリー写真素材Canary様 | |
◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma |