すずめばち ― アリストファネス組曲 (Ralph Vaughan Williams : The Wasps - Aristophanic Suite) |
レイフ・ヴォーン・ウィリアムズは20世紀前半のイギリス音楽を代表する作曲家のひとりでございます。20世紀の作曲家らしく、フランス印象派をはじめとする当時の音楽の手法を摂取しながらも、独自の味わいをもった作品を数多く残し、晩年はイギリス音楽界の重鎮とされました。 |
「すずめばち」は1909年、ケンブリッジ大学で上演されたアリストファネスの喜劇「蜂」の付随音楽として作曲された中から、序曲と4つの曲を組曲にまとめたもので、「アリストファネス組曲」の別名をもっております。 ヴォーン・ウィリアムズの作品としては初期に属しますが、たいへん親しみやすく、またユーモラスな音楽でございます。 |
5曲から成る組曲中、もっとも力の入った曲は序曲でございます。 蜂の羽音を暗示する導入部に始まり、非常に印象的なペンタトニックの主題をもつこの曲は、全体として自由なソナタ形式に基いて構成されております。随所にフランス印象派的な音響を用いながらも、楽しく闊達な音楽の流れは、ヴォーン・ウィリアムズの音楽の明朗な面を示して余すところがございません。 この序曲は比較的知られておりますが、その他の曲を耳にする機会はめったにありそうもございません。 第2曲は奇妙な味わいをもった「間奏曲」。短い曲ですが、音遣いに当時の先端的なフランス音楽のこだまが聴こえます。 第3曲は「台所用品の行進曲」と題されたユーモラスなマーチ。トリオではヴォーン=ウィリアムズらしい民謡風の旋律が繰り返されます。 第4曲は再び「間奏曲」。こちらは第2曲と異なり、一見堂々とした押し出しの曲。 最後の第5曲は「バレエと最終場面」で、多彩な楽想がおもちゃ箱をひっくり返したように次々に接続されております。途中に一度だけ、ちらりと序曲のメロディが再現されるのは心憎い演出と申せましょう。
「あそびの音楽館」では、この組曲を2台のピアノ用にアレンジいたしました。 |