ストラヴィンスキー/ペトルーシュカ
(Stravinsky : Pétrouchka)

「火の鳥」の成功で一挙に広まったストラヴィンスキーの名は、1911年の「ペトルーシュカ」によって、当時のパリ楽壇と聴衆の脳裏に、決定的に刻み付けられました。ドビュッシーをはじめとする多くの進歩的な音楽家が、ストラヴィンスキーの音楽に多大の興味を示し、また、称賛しております。
Stravinsky 「火の鳥」のあと、ストラヴィンスキーは次の作品として、太古の異教的儀式をテーマとした作品を構想しました。これは後に「春の祭典」として結実しますが、作曲にてこずっているうちに、ピアノ協奏曲的な別の作品を着想します。
書いた曲の一部をディアギレフに弾いて聴かせたところ、「バレエ・リュス」の主宰者は大いに気入り、この曲を次のバレエ作品として仕上げることを要請いたします。
ディアギレフは台本作者にベヌア(Areksandr Benua;1870〜1960)を起用し、ストラヴィンスキーはベヌアと共同で物語を作りながら、並行して作曲を進めます。
1910年の冬から翌年の春にかけて書かれた「ペトルーシュカ」は1911年6月に初演され、前述のように成功を収めました。ただし、当時はこの作品の先端性に対する拒絶反応も見られ、例えばウィーン・フィルなどはこれを「いかがわしい音楽」と呼んだそうでございます。

「ペトルーシュカ」は「火の鳥」に続く作品ですが、作風はかなり異なっており、「火の鳥」に濃厚に見られた19世紀ロマン派的な風味はほぼ失われ、きわめて近代的な技法が縦横に駆使されております。複調やポリリズム、コラージュなど尖鋭な手法を躊躇なく使用する一方、ロシア民謡そのものあるいはそれらしい楽想を多用することで、斬新さとともにロシア国民楽派ふうの聴きやすさも担保しており、今日まで愛好される作品となっております。

「ペトルーシュカ」の物語は、大部分をベノアが作り上げたもので、3体の人形が生命を与えられ、三角関係に陥った挙句、道化役のペトルーシュカが殺され、亡霊になるというなんだか救いのない話でございます。
全曲は4つの場で構成されております。
第1場では人形使いの魔術師によって3体の人形が生命を与えられ、第2場ではペトルーシュカがバレリーナ人形に恋心を告白するも無情にフラれ、第3場ではイケメンのムーア人とバレリーナがいちゃついていることろにペトルーシュカが殴り込みをかけるも簡単に撃退され、第4場ではペトルーシュカがムーア人に惨殺されて亡霊になってしまう、というのが概要です。

「あそびの音楽館」では、全曲をストラヴィンスキー自身がピアノ連弾用に編曲したものを公開することにいたしました。
お楽しみいただければ幸甚でございます。


ペトルーシュカ・全曲連続再生 

◇第1場:謝肉祭の市◇
(Premier Tableau : Fête populaire de semaine grasse)
導入〜群衆(Début - Les foules) 
人形使いの見世物小屋(La baraque du charlatan) 
ロシア舞曲(Danse Russe) 
◇第2場:ペトルーシュカの部屋◇
(Second Tableau : Chez Pétrouchka)
ペトルーシュカの部屋(Chez Pétrouchka) 
◇第3場:ムーア人の部屋◇
(Troisième Tableau : Chez le Maure)
ムーア人の部屋(Chez le Maure) 
バレリーナの踊り〜ワルツ(Danse de la Ballerine - Valse) 
◇第4場:謝肉祭の市、夕景◇
(Quatrième Tableau : Fête populaire de semaine grasse ; Vers le soir)
いろいろな踊り〜ペトルーシュカとムーア人の格闘〜ペトルーシュカの死 
 (Danses diverses - La rixe: Le Maure et Pétrouchka - La mort de Pétrouchka)
ペトルーシュカの亡霊(Apparition du double de Pétrouchka) 

◇あそびのピアノ連弾に戻ります◇
◇編曲:I. ストラヴィンスキー ◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録音:jimma