シベリウス/「テンペスト」のための音楽 作品109
(Jean Sibelius : Music for "The Tempest", Op.109)

Jean Sibelius 1920年代の前半、年齢的には55歳から60歳頃までの5〜6年間にあたりますが、この時期のシベリウスは、創作力の最後の頂点に達しておりました。
1923年に第6交響曲、翌24年に第7交響曲と、矢継ぎ早に2曲の交響曲を発表。続いて、1925年から26年にかけて、シェイクスピアの「テンペスト」のための付随音楽と交響詩(音詩)「タピオラ」が作曲されます。
これらの作品はどれをとっても、それぞれのジャンルでシベリウスの創作活動を締めくくるにふさわしい傑作と申せましょう。
コペンハーゲンの王立劇場からシェイクスピアの「テンペスト」のための付随音楽作曲の依頼を受けたシベリウスは、1925年の秋から翌年の初めまでの期間をこの仕事に費やし、劇のために序曲を含む36曲の音楽を書き上げました。ちなみに当時のデンマークには、第4・第5交響曲で世界的名声を得つつあったカール・ニールセンの存在があったにもかかわらず、どうしてこの仕事があえてフィンランドのシベリウスに持ちかけられたのかは謎でございます。

1926年3月15日の初演は大成功で、「シェイクスピアとシベリウス、この二人の天才は、今やお互いを見出した」という評もあったそうでございます。
シベリウス自身は、初演の直後に「『テンペスト』の音楽には、もっとじっくり発展させたいテーマがたくさんある。劇の伴奏という用途のために、私はそれらをあっさりと扱うことしかできなかった」と書いております。
想像をたくましくすると、シベリウスはより大きな作品の素材として書き溜めておいたアイディアの多くを当座の必要から「テンペスト」に利用したものの、いずれはゆっくり熟成して新たな傑作に成就させるつもりだった、とも考えられます。が、「タピオラ」の完成後、長年月にわたる交響曲創作の苦闘も虚しく、ついに第8交響曲が私どもの前に姿を現すことはありませんでした。

さて、初演から3年経った1929年、シベリウスは「テンペスト」の音楽から、序曲と2つの演奏会用組曲を編成いたします。
第1組曲には10曲、第2組曲には9曲が選ばれました。
2つの組曲に含まれた曲は大部分がごく短い小品で、個々の作品を単独に聴きますと、少々あっけない気がしてしまうのですが、組曲として通して聴けば、これはこれで立派にシベリウス晩期の充実した作品という感が深まります。

1910年代以降のシベリウスは、同時代の新しい音楽の動きに非常に敏感で、ドビュッシー、スクリャービン、リヒャルト・シュトラウス、シェーンベルク、ストラヴィンスキーのような人々の新作に大きな興味と関心をもっておりました。とりわけドビュッシーとシェーンベルクの音楽はシベリウスに強いインパクトを与えたようで、「テンペスト」の音楽も、三全音や全音音階、無調的な響きなどがシベリウスの地肌と融合して、独特の新鮮さ、強いて申すなら穏健なモダニズムを成しております。

このたび、「あそびの音楽館」では、「テンペスト」のための音楽から、序曲と2つの組曲を2台のピアノ用にアレンジしてみました。
原曲の面白味はほとんど残っていない編曲ではございますが、暇つぶしにでもお聴きいただければ幸甚でございますm(__)m


序曲 作品109-1(Overture, Op.109-1) 

組曲第1番 作品109-2(Suite No.1, Op.109-2) 
樫の木(The Oak) 
フモレスケ(Humoreske) 
カリバンの歌(Kaliban' Song) 
収穫をする人々(The Harvesters) 
カノン(Canon) 
情景(Scéne) 
イントラーダ ― 子守唄(Intrada - Berceuse) 
アリエルの歌(Ariel's Song) 
嵐(The Tempest) 
組曲第1番 作品109-2・全曲連続再生 

組曲第2番 作品109-3(Suite No.2, Op.109-3) 
風の合唱 ― 間奏曲(Chorus of the Winds - Intermezzo) 
ニンフたちの踊り(Dance of the Nymphs) 
プロスペロ ― 2つの歌(Prospero - Song I - Song II) 
ミランダ(Miranda) 
水の精(The Naiads) 
ダンス・エピソード(Dance Episode) 
組曲第2番 作品109-3・全曲連続再生 

◇あそびのピアノ連弾に戻ります◇
◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集
◇編曲・MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma