シベリウス/3つのソナチネ 作品67
(Jean Sibelius : Three Sonatinas for Piano, Op.67)

ここで取り上げました「3つのソナチネ」は、その切り詰められた簡潔な音のいわば行間から、たいへん広大な音楽的空間が立ち上がってくるという点で、シベリウスのすべてのピアノ作品の中でも特筆すべき地位を占めていると存じます。

作曲は1912年、シベリウス47歳の年ですが、その前後には第4交響曲をはじめ、「森の精」「ルオンノタール」「吟遊詩人」といったユニークな傑作・佳作が生まれており、創作活動の上ではたいへん充実した時期でございました。
しかしながら私生活の上では、1908年に喉に腫瘍が見つかり、手術で除去はしたものの、再発を恐れる日々が続いておりました。この「死の淵を覗いた」体験が、この時期のシベリウスの作品に影を落としていることは否定できません。それは「3つのソナチネ」の孤独な佇まいの中にも多かれ少なかれ反映されているように感じられます。

3曲のうち、第1番と第2番は3楽章、第3番は2楽章で構成されております。
第1番・第2番が簡素で静謐な音楽なのに対し、第3番はやや趣きが異なり、共通の素材による緩徐楽章と終楽章とを融合した第2楽章のような、構成上の野心的な試みもございます。演奏技巧の面でも、第3番は他の2曲に比べて、より高いヴィルトゥオージティが要求されております。

(2009.2.23〜3.5)

ソナチネ 第1番 嬰へ短調 作品67-1(Sonatina No.1 in F sharp minor) 
  第1楽章:アレグロ(I. Allegro) 
  第2楽章:ラルゴ(II. Largo) 
  第3楽章:アレグロ・モデラート(III. Allegro moderato)
  ソナチネ第1番・全曲連続再生 

ソナチネ 第2番 ホ長調 作品67-2(Sonatina No.2 in E major) 
  第1楽章:アレグロ(I. Allegro) 
  第2楽章:アンダンティーノ(II. Andantino) 
  第3楽章:アレグロ(III. Allegro) 
  ソナチネ第2番・全曲連続再生 

ソナチネ 第3番 変ロ短調 作品67-3(Sonatina No.3 in B flat minor) 
  第1楽章:アンダンテ ― アレグロ・モデラート(I. Andante - Allegro moderato) 
  第2楽章:アンダンテ ― アレグレット(II. Andante - Allegretto) 
  ソナチネ第3番・全曲連続再生 

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◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集
◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma