シベリウス/「カレリア」の音楽
(Jean Sibelius : Karelia Music, Overture and Suite)

1892年、大作「クレルヴォ交響曲」の大成功で将来に見通しを得た26歳のシベリウスは、その年の6月10日、2年前に婚約していた6歳年下のアイノ・ヤーネフェルトと結婚します。このとき、新婚旅行を過したのがカレリア地方でございました。

カレリアはフィンランド人の精神的故郷といわれておりますそうで、現在はその大部分がロシア領となっておりますが、歴史的にはフィンランドにとってかけがえのない地域だったようでございます。
この地を旅しながら古くから伝わるフィンランドの民俗音楽に触れたことで、シベリウスの音楽観が深化したことに疑問の余地はございません。シベリウスはそれまでの自分の音楽的方向性が中途半端であると反省し、成功作であるにもかかわらず、「クレルヴォ交響曲」の演奏を禁じたほどでございました。

さて、カレリア地方への旅行の翌1893年、カレリア地方のヴィポリの学生協会がカレリアの歴史をテーマにした野外劇の上演を企画し、その音楽がシベリウスに委嘱されます。序曲と7つ(正確には8つ)の歴史的情景から成る劇の音楽を書き上げるため、シベリウスはおよそ6ヶ月の間、作曲にかかりきりになりました。

初演はその年の11月13日、シベリウス自身の指揮で行われましたが、広い会場は騒音に満ち、聴衆は音楽に大して興味も示さず、オーケストラの近くで聴いているのはほんのひと握りという有様で、とうてい成功とはいいがたいものでございました。
しかしながら、シベリウスは特に気落ちすることもなく、上演直後に全曲から8曲を選んで演奏会用組曲を編集し、その後さらに精選して、最終的に序曲と3曲から成る組曲に再編いたしました。
序曲と組曲は、早くも11月23日のコンサートで演奏され、好評をもって迎えられました。とりわけ「カレリア組曲」の方はシベリウスの人気曲として、今日でもしばしばコンサートで上演されております。

ところで、シベリウス自身は「カレリア」の音楽を重要な作品とは看做していなかったようでございます。
1893年11月の初め、「カレリア」初演前のことですが、シベリウスは以下のようなことを書いております。

「金を稼ぐために作曲すると、どうもロクなものが出来ない気がする」

シベリウス自身がこの曲の価値を知ったのは、曲がどこで演奏されても非常な人気を博すのを実感してからのことでした^^;
とはいえ、シベリウスの自己批判はこの曲の評判に曇らされることはなく、1906年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社からスコアが出版される際、次のような注文を付けております。

「出版の際には曲を序曲と組曲に分割し、それぞれに作品10、作品11の番号を与えること。その理由は、これらがごく若書きの作品にすぎないことを明確にするためである」

ここに取り上げました「カレリア」の音楽では、いうまでもなく「カレリア組曲」が抜群に有名な反面、「カレリア序曲」の方はほとんど話題にすらならない曲でございます。しかしながら、ロンド・ソナタふうの緩い構成のこの序曲も、初期のシベリウスらしい旋律性に溢れ、またエピソードとして「カレリア組曲」の「間奏曲」の主題が現れるなど、それなりに面白味もございます。両曲合わせてお楽しみいただければありがたく存じますm(__)m

なお、この2曲の連弾へのアレンジは、カール・エクマン(1869〜1947)によるものです。エクマンはヘルシンキ音楽院(現在はシベリウス音楽院)のピアノ科教授で、シベリウスの友人でもあった人物ということでございます。


カレリア序曲 作品10(Karelia - Overture, Op.10) 

カレリア組曲 作品11(Karelia - Suite, Op.11) 
    第1曲:間奏曲(I. Intermezzo) 
    第2曲:バラード(II. Ballade) 
    第3曲:行進曲風に(III. Alla Marcia) 
    カレリア組曲 作品11・全曲連続再生 

◇あそびのピアノ連弾に戻ります◇
◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集
◇編曲:K. エクマン ◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma