シューマン/弦楽四重奏曲第2番ヘ長調 作品41-2
(Robert Schumann : String Quartet No.2 in F major, Op.41-2)

1842年はシューマンの「室内楽の年」といわれます。実際この1年間に、シューマンの残したおよそ10曲の本格的室内楽作品中の5曲が書かれ、そのうちのピアノを含む2曲、ピアノ五重奏曲とピアノ四重奏曲は、シューマンの室内楽を代表する傑作としてたいへん有名でございます。
その一方で、作品41に収められた3つの弦楽四重奏曲は、これはまたどうしたことか、世間でもあまり話題にされることがございません。たしかにこれらの曲は、ピアノを含む他の作品に比較しますと、全般的に地味な印象のあることは否定しようもございませんが、弦楽四重奏ならではの魅力が満載されておりますことも事実であり、なんとなく不当に冷遇されているような気がいたします。
そこで、今年はシューマン生誕200年ということもあり、これらの弦楽四重奏曲の中からせめて1曲はやってみようと思い立ちました。
おそらく音楽的に最も充実しておりますのは第3番であろうと思われますが、春の息吹を感じさせるのびやかな魅力に満ちた作品ということで、ここでは第2番を取り上げることにいたします。

ヘ長調の弦楽四重奏曲第2番は、変奏曲の緩徐楽章とスケルツォの第3楽章をアレグロの両端楽章が挟むという伝統的な形で構成されております。
第1楽章は簡潔な提示部・再現部と、それに比較して大きな展開部をもつシューマンふうのソナタ形式で書かれております。空に向かって伸び上がるような清新な第1主題がたいへん魅力的でございます。
第2楽章の主題は明確な旋律線をもたず、いくつかの要素の集まりでできておりますため、変奏主題としては少々曖昧な感じがいたしますが、続く4つの変奏を通して主題のイメージが次第にクリアになっていく様子は、変奏曲としてかなり斬新な行き方ではないかと存じます。
第3楽章はごく簡潔なスケルツォとトリオでございます。全曲中唯一短調の楽章で、伴奏のリズムにシンコペーションを多用しておりますため、拍子のアクセントがあちこちで微妙にズレて安定せず、独特の効果を挙げております。シューマンのこういうリズム書法は、ブラームスのお手本になったのではないかと愚考いたします。
終楽章は軽快・簡潔なソナタ形式で書かれ、随所に対位法的な応答を見せながら屈託なく進んでまいります。第1主題の曲想にはちょっと第1交響曲「春」の終楽章を連想させるものがございます。さらに興味深いのは第2主題で、これは第2交響曲フィナーレの第2部の主題ほとんどそのままと申せましょう。病と闘いながら第2交響曲の作曲を進めていたとき、幸福な時期に書いた弦楽四重奏曲の旋律が無意識のうちにシューマンの脳裏に蘇ったということでございましょうか?

本来、4本の弦楽器で演奏されるべき作品ではございますが、ソロの音色は扱いに手間ひまがかかる上、オリジナルの演奏ならばCDでも買って聴いた方がよっぽどマシでございますので、ゲテモノ趣味の弊サイトとしましては、この曲を弦楽合奏でやっております。
この弦楽合奏版で、シューマンの室内楽に多少なりとも興味をお持ちいただければ幸甚でございます。

なお、弦楽合奏への編曲にあたりましては、四声部を五声部に改めます関係から、原曲にいろいろと手を加えております点、どうかご了承くださいませm(__)m


第1楽章/アレグロ・ヴィヴァーチェ (I. Allegro vivace) 
第2楽章/アンダンテ、クァジ・ヴァリアツィオーニ (II. Andante, quasi Variazioni) 
第3楽章/スケルツォ:プレスト (III. Scherzo : Presto) 
第4楽章/アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ (IV. Allegro molto vivace) 

弦楽四重奏曲第2番ヘ長調作品41-2・全曲連続再生 

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◇背景画像提供:「自然いっぱいの素材集」
◇編 曲・MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma