シューマン/ピアノ協奏曲 イ短調 作品54
(Robert Schumann : Piano Concerto in A minor, Op.54)

ベートーヴェン以降の19世紀ロマン派の時代、数多くのピアノ協奏曲が生まれましたが、シューマンの作品はこのジャンルでは最初の歴史的傑作と申してよろしいかと存じます。

よく知られているように、シューマンは初めのおよそ10年間(1830〜39、作品1から作品23まで)にピアノ独奏曲のみを発表し続け、ピアノ小品の作曲家としての名声を確立しましたが、1840年には歌曲に手を広げてこの1年間でドイツ・リートの大家となり、翌1841年にはオーケストラ作品を発表、ベートーヴェンの後継者としての第一歩を踏み出しました。
この年に書かれたオーケストラ作品としては、「春」のニックネームをもつ第1交響曲、後年第4番として確定されるニ短調の交響曲、シンフォニエッタと申してよい「序曲、スケルツォとフィナーレ」、そしてピアノとオーケストラのための「幻想曲」の4曲が挙げられます。
この「幻想曲」は作曲した年にクララ・シューマンのピアノとゲヴァントハウス管弦楽団の演奏で初演されましたが、シューマンはこれを完成作として出版せず、1845年に改作した上で間奏曲とロンドの2つの楽章を付け加えて、新たにピアノ協奏曲として発表。これは広く一般に受け入れられ、シューマンの代表的な傑作としてレパートリーに定着いたしました。

全曲は3つの楽章から構成されておりますが、第2楽章と第3楽章は切れ目なく接続されております。これはベートーヴェンの第4・第5ピアノ協奏曲の前例に従ったとも申せますが、1830年代に発表されたメンデルスゾーンの2つのピアノ協奏曲が全曲連続して演奏されること、シューマン自身の第4交響曲やチェロ協奏曲が楽章間の切れ目をもたないことなどから見て、当時のライプツィヒ楽派で多楽章作品を単一楽章的に書くことが一種の流行になっていたことも無関係ではないかもしれません。

第1楽章は演奏時間で全体の約半分を占めており、ピアノとオーケストラのバランスも適正で、充実した音楽となっております。強いインパクトをもった冒頭とそれに続く憂愁に満ちた第1主題の提示は、明らかに後のグリーグに大影響を与えております。
第2楽章は短い間奏曲で、一見すると終楽章とのつなぎに過ぎないようにも思えますが、楽想はきわめて魅力的で、特に中間部にはたっぷりした抒情が盛られております。
第3楽章は明朗なロンド。1830年代に数多く書かれたシューマンのピアノ小品を想起させるような珠玉のパッセージがちりばめられた爽快な音楽でございます。

ここで取り上げました2台ピアノ版は、ヒラー(Ferdinand Hiller;1811〜1885)の手に成るものでございます。ヒラーはシューマンの同時代人で、ピアニスト・指揮者・作曲家として著名な人物。メンデルスゾーンの親友でもありました。
2台ピアノによるシューマンのピアノ協奏曲、お楽しみいただければ幸甚です。


ピアノ協奏曲 イ短調 作品54・全曲連続再生 

第1楽章/アレグロ・アフェットゥオーソ(I. Allegero affettuoso) 
第2楽章/間奏曲:アンダンティーノ・グラツィオーソ
    〜第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ 
    (II. Intermezzo : Andantino grazioso - III. Allegro vivace) 

◇あそびのピアノ連弾に戻ります◇
◇編曲:F. ヒラー ◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録音:jimma