シューマン/ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44
(Robert Schumann : Piano Quintet in E flat major, Op.44)

作曲家としての最初の10年間、ピアノ曲ばかりを発表してきたシューマンは、1840年に数多くの歌曲、1841年にオーケストラを用いた作品を世に問い、1842年にはすぐれた室内楽作品を生み出すというように、30歳代の初めの時期に自らの守備範囲を拡大いたしました。
1842年は「室内楽の年」といわれ、6月から11月にかけて、3つの弦楽四重奏曲、それぞれ1曲ずつのピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲と、5つの本格的室内楽作品を矢継ぎ早に書き上げました。
これらはいずれも19世紀ロマン派における室内楽の重要作とされておりますが、ピアノを含む2つの作品はとりわけ有名で、特にピアノ五重奏曲は初演時から人気があり、この曲を献呈された妻のクララは自らのコンサートで積極的に演奏、一般への受容に大いに貢献しました。

19世紀ロマン派の時代にはピアノを含む室内楽曲に多くの名作が生まれましたが、ピアノと弦楽四重奏によるピアノ五重奏曲では、シューマン、ブラームス、フランクの作品が際立って傑出しているとされております。重厚長大な後者2曲に較べ、明朗な生命力を率直に訴えかけるシューマンの作品は、このジャンルの曲ではもっとも愛好されていると申しても過言ではないでしょう。

全曲は伝統的な4つの楽章で構成されております。
第1楽章はソナタ形式で、躍動的な第1主題と非常に魅力的な旋律線をもつ第2主題によるソナタ形式で書かれております。
第2楽章は葬送行進曲の雰囲気をもつロンド形式の緩徐楽章。
急速なスケルツォの第3楽章は、シューマン的な2つのトリオをもつ音楽となっております。
第4楽章は特異な形式をとり、前半はト短調で始まるソナタ形式、後半は第2展開部というべき部分と対位法的な長大なコーダで構成されます。ここでは第1楽章第1主題のモティーフが現れ、全曲を有機的に構築しております。

ここで取り上げましたピアノ連弾版は、キルヒナー(Fürchtegott Theodor Kirchner, 1823〜1903)の手に成るものでございます。
ピアノ連弾によるシューマンのピアノ五重奏曲、お楽しみいただければ幸甚です。


ピアノ五重奏曲変ホ長調作品44・全曲連続再生 

第1楽章/アレグロ・ブリランテ(I. Allegero brillante) 
第2楽章/ウン・ポーコ・ラルガメンテ、行進曲の雰囲気で) 
    (II. Un poco largamente, in modo d'una marcia) 
第3楽章/スケルツォ:モルト・ヴィヴァーチェ(III. Scherzo : Molto vivace) 
第4楽章/フィナーレ:アレグロ・ノン・トロッポ(IV. Finale : Allegro non troppo) 

◇あそびのピアノ連弾に戻ります◇
◇編曲:T. キルヒナー ◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録音:jimma