シューマン/劇付随音楽「マンフレッド」作品115
(Robert Schumann : Manfred, Op.115)

ジョージ・ゴードン・バイロン(1788-1824)は19世紀の音楽家たちに大いにインスピレーションを与えたイギリス・ロマン派の詩人でございます。ベルリオーズの「イタリアのハロルド」やヴェルディの「二人のフォスカリ」、チャイコフスキーの「マンフレッド交響曲」などは、バイロンに基く音楽作品の一例でございます。中でも1817年作の詩劇「マンフレッド」は、バイロンの作品中でももっとも有名なものと申せましょう。

さて、シューマンは1840年代の前半にバイロンの「海賊」のオペラ化を試みてうまくいかず、方向を変えてオペラ「ゲノフェーファ」を書き上げた後、再びバイロンに挑みました。今回選ばれた題材は「マンフレッド」で、シューマンはこの詩劇の音楽化に極度の熱意をもってあたったのでございます。

「『マンフレッド』ほどに、強い愛情と情熱を持って私自身を捧げた作品はない」  (石川亮子・訳)

とは、シューマン自身の言葉でございます。
曲は1848年の10月から11月の間に一気に書き上げられたようですが(オーケストレーションは翌49年完成のようです)、初演は大幅に遅れ、序曲は作曲から5年後の1853年の3月14日にシューマン自身の指揮でライプツィヒで、全曲は同年6月14日にリストの指揮でワイマールで、ようやく演奏されたのでございました。

シューマンの「マンフレッド」は非常に特異な演奏形態の作品で、独唱、合唱、管弦楽の他に、複数の語り手を必要としております。すなわち、劇中の登場人物のうち、主人公のマンフレッドをはじめ、狩人、聖モーリスの僧院長、魔神アーリマン、女神ネメシスなどには語りが、さまざまな精霊たちには独唱や合唱が割り当てられ、管弦楽は全般的な劇の進行を背後から支え、あるいは前面に出て情景を表現するという、オペラでもジングシュピールでも通常のBGMでもない、型破りな作品でございます。
シューマン自身はこの作品を「《音楽付きの詩劇》として告知されるものでしょう。これは全く新しい、先例のないものなのです(石川亮子・訳)」と、かなりの自信を潜ませながらリストに説明しております。

「マンフレッド」は序曲と15曲の音楽から成り、全体は大きく3つの部分で構成されております。各部分はバイロンの原作の各幕に対応しており、歌詞もシューマンが新たに書いたのは1行のみで、バイロンの原詩1336行から約1000行のドイツ語訳を、そのまま使っております。
シューマンがこの作品のために書いた序曲は、おそらく4つの交響曲とともに、この作曲家のオーケストラ作品の代表作と申せましょう。ハンブルクでこの曲を聴いて感激した青年ブラームスが、触発されて交響曲を書く決意をしたというエピソードもあるようでございます。実際、演奏されることの少ないシューマンの序曲作品のうちで、この曲だけはずば抜けた演奏頻度を誇っております。
一方、序曲に続く第1部以降の音楽が今日上演されることは、まずめったにないと申して差し支えありません。実のところ、私自身も序曲以外の部分は聴いたことがございません。が、フルスコアを見てみますと、なかなかに興味深い音楽が満載されており、捨て置くには惜しい作品のように感じられます。

「あそびの音楽館」では、シューマンのこの野心的な作品の全曲を音にしてみることにいたしました。原曲は独唱、合唱に加えて、通常の2管編成にピッコロ、イングリッシュホルン、第3トランペット、オルガンなどを含む、シューマンとしては大編成のスコアとなっておりますが、これは弊サイトの録音レヴェルをはるかに超えております。
というわけで、オーケストラ部分はピアノ連弾(最終曲のみオルガンが入ります)、声楽部分は弦楽四重奏主体という、ごくこぢんまりとした編成にアレンジしております。

はたしてお楽しみいただけるかどうか、たいへん心許ない気がいたしますが、暇つぶしにでもお聴きいただければ幸甚でございますm(__)m


 序 曲(Ouverture)  ◆メ モ

◆第 1 部◆
 第1曲:精霊たちの歌(Gesang der Geister)  ◆メ モ
 第2曲:彼女の似姿 ― 第3曲:霊の呪い 
      (Erscheinung eines Zauberbildes - Geisterbannfluch)
◆メ モ
 第4曲:葦笛の調べ(Alpenkuhreigen)  ◆メ モ
 「マンフレッド」第1部・全曲連続再生 

◆第 2 部◆
 第5曲:間奏曲(Zwischenactmusik)  ◆メ モ
 第6曲:アルプスの精霊の声(Rufung der Alpenfee)  ◆メ モ
 第7曲:アーリマンを讃える精霊たちの歌(Hymnus der Geister Ariman's)  ◆メ モ
 第8曲:平伏せよ(Wirf in den Staub dich)  ◆メ モ
 第9曲:この蛆虫を踏み潰せ(Zermalmt den Wurm)  ◆メ モ
 第10曲:アスターティの召喚(Beschwörung der Astarte)  ◆メ モ
 第11曲:アスターティに語りかけるマンフレッド(Manfred's Ansprache an Astarte) ◆メ モ
 「マンフレッド」第2部・全曲連続再生 

◆第 3 部◆
 第12曲:私の心は穏やかだ(Ein Friede kam auf mich)  ◆メ モ
 第13曲:太陽への告別(Abschied von Sonne)  ◆メ モ
 第14曲:あそこをごらんなさい(Blick' nur hierher)  ◆メ モ
 第15曲:終末の場面(Schluß - Scene)  ◆メ モ
 「マンフレッド」第3部・全曲連続再生 

◇あそびのピアノ連弾に戻ります◇
◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集
◇編曲・MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma