シューマン/劇付随音楽「マンフレッド」作品115 (Robert Schumann : Manfred, Op.115) |
ジョージ・ゴードン・バイロン(1788-1824)は19世紀の音楽家たちに大いにインスピレーションを与えたイギリス・ロマン派の詩人でございます。ベルリオーズの「イタリアのハロルド」やヴェルディの「二人のフォスカリ」、チャイコフスキーの「マンフレッド交響曲」などは、バイロンに基く音楽作品の一例でございます。中でも1817年作の詩劇「マンフレッド」は、バイロンの作品中でももっとも有名なものと申せましょう。 さて、シューマンは1840年代の前半にバイロンの「海賊」のオペラ化を試みてうまくいかず、方向を変えてオペラ「ゲノフェーファ」を書き上げた後、再びバイロンに挑みました。今回選ばれた題材は「マンフレッド」で、シューマンはこの詩劇の音楽化に極度の熱意をもってあたったのでございます。
「『マンフレッド』ほどに、強い愛情と情熱を持って私自身を捧げた作品はない」 (石川亮子・訳)
とは、シューマン自身の言葉でございます。
シューマンの「マンフレッド」は非常に特異な演奏形態の作品で、独唱、合唱、管弦楽の他に、複数の語り手を必要としております。すなわち、劇中の登場人物のうち、主人公のマンフレッドをはじめ、狩人、聖モーリスの僧院長、魔神アーリマン、女神ネメシスなどには語りが、さまざまな精霊たちには独唱や合唱が割り当てられ、管弦楽は全般的な劇の進行を背後から支え、あるいは前面に出て情景を表現するという、オペラでもジングシュピールでも通常のBGMでもない、型破りな作品でございます。
「マンフレッド」は序曲と15曲の音楽から成り、全体は大きく3つの部分で構成されております。各部分はバイロンの原作の各幕に対応しており、歌詞もシューマンが新たに書いたのは1行のみで、バイロンの原詩1336行から約1000行のドイツ語訳を、そのまま使っております。
「あそびの音楽館」では、シューマンのこの野心的な作品の全曲を音にしてみることにいたしました。原曲は独唱、合唱に加えて、通常の2管編成にピッコロ、イングリッシュホルン、第3トランペット、オルガンなどを含む、シューマンとしては大編成のスコアとなっておりますが、これは弊サイトの録音レヴェルをはるかに超えております。
はたしてお楽しみいただけるかどうか、たいへん心許ない気がいたしますが、暇つぶしにでもお聴きいただければ幸甚でございますm(__)m
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