シューベルト/交響曲 第8番 ハ長調 D.944
(Schubert : Symphony No.8 in C major D.944)

交響曲作家としてのシューベルトを不動の位置に据えている作品は、「未完成」の名で親しまれているロ短調(D.759)と、この大交響曲ハ長調の2曲であることには、誰しも異論のないところかと存じます。にもかかわらず、これら2曲はいずれも作曲者の没後に発見されて再評価を受けた点で共通しており、生前のシューベルトはまことに気の毒な人であったというほかございません。

「ザ・グレート」という通称で知られるこの交響曲は、完成された交響曲としてはシューベルト最後の作品でございます。
かつて、この曲は1828年、すなわちシューベルト最後の年に作曲され、この短命の天才のいわば「白鳥の歌」とされておりました。
が、研究の結果、この曲の作曲年代は1825年に遡るものと判定され、今日では最晩年の作ではないことがどうやら確定しているようでございます。
とはいえ、わずか28歳の青年の手によってこのような壮大で画期的な交響曲が書かれたことは驚異的と申して過言ではございません。

この曲はシューベルト没後10年を経て、墓参に訪れたシューマンの手によって発見され、メンデルスゾーンとゲヴァントハウス管弦楽団が初演して以来、ベートーヴェンで頂点を極めたと思われた交響曲というジャンルに新しい道を拓いた傑作として、音楽史上に輝いております。

さて、シューベルトの完成された交響曲を年代順に並べた結果、「第7」の番号を与えられたこの曲でございますが、1860年代になって未完成のロ短調交響曲が発見され、「第7」の番号も怪しくなってまいります。「未完成」が「第8」の番号を与えられたため、「未完成」よりも後に作曲されたこの曲を「第7」とするのも変な話になったわけでございます。
結局、ほぼ完成されながらオーケストレーションの途中で放棄されたホ長調の作品を「第7」とし、ハ長調の大交響曲は作曲年代順に「第9」とするのが座りがよいということで、「ザ・グレート」は長らく「第9番」ということで通ってまいりました。
しかしながら、1978年に至り、国際シューベルト協会はホ長調の未完成交響曲を番号付き交響曲から外し、形態的には未完成ながら内容的には充分完成されているロ短調の「未完成」を「第7」とし、「ザ・グレート」は「第8」に繰り下げる、という決定を下しました。
とはいえ、長く親しまれた番号が急に変更されることに対する抵抗も大きく、現在でもこの作品は「第8」、「第9」の2つの番号を揺れ動いていると申せましょう。

全曲は伝統的な4つの楽章で構成されておりますが、各楽章の大きさ、表現の独自性は目を瞠るばかりでございます。ことに第1楽章の冒頭に現れる旋律はシューマンの「モットー」を予見させる意義をもっており、この交響曲を一層印象的なものにしております。

連弾への編曲につきましては、例によって私の力不足から原曲のすばらしさのごく一部すら再現できておりませんが、万が一、ピアノで聴くのも目先が変わって面白い、と僅かなりとも思っていただければ、望外の幸せでございますm(__)m


交響曲第8番ハ長調 D.944・全曲連続再生 

第1楽章/アンダンテ−アレグロ・マ・ノン・トロッポ (I. Andante - Allegro ma non troppo) 
第2楽章/アンダンテ・コン・モート (II. Andante con moto) 
第3楽章/スケルツォ:アレグロ・ヴィヴァーチェ (III. Scherzo : Allegro vivace) 
第4楽章/フィナーレ:アレグロ・ヴィヴァーチェ (IV. Finale : Allegro vivace) 

◇あそびのピアノ連弾に戻ります◇
◇背景画像提供:フリー写真素材Canary様
◇編 曲・MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma