シューベルト/交響曲第7番ロ短調D.759「未完成」
(Schubert : Symphony No.7 in B minor, D.759 "Unfinished")

「未完成交響曲」といえば、1980年代にCDが普及する以前のLP時代には、おそらくベートーヴェンの第5交響曲と並んでもっとも有名な交響曲だったと思われます。「運命/未完成」のカップリングはLPの定番で、当時小学生だった私が初めて手にしたベートーヴェンの第5交響曲のB面も、たしかに「未完成交響曲」でございました(ちなみに、演奏はフリッツ・ライナー指揮シカゴ交響楽団)。
21世紀も5分の1を過ぎようとしております現在では、交響曲の入門曲としての「未完成」の人気も昔ほどではないと申せましょうが、この作品がシューベルトの交響曲の代表作のひとつであり、交響曲史上で際立った光芒を放ち続けておりますのは依然として事実でございます。

シューベルトがこの交響曲を書いたのは1822年、25歳の年ですが、最初の2つの楽章のあと、第3楽章のスケルツォが途中で放棄され、その後スコアは長らく日の目を見ることのないまま40年ほどが過ぎ、ようやく初演されたのは1865年になってからのことでした。未完成で終わった理由は現在でも不明のままですが、終楽章の素材は「ロザムンデ」に転用されたとの説もあり、そうした想定のもとに後半の2楽章を補作した全曲の録音も出ております。とはいえ、この作品は、ちょうどベートーヴェンの第32番のピアノ・ソナタ、あるいはブルックナーの第9交響曲のように、音楽的にはこのままで立派に完結しているようにも思われ、「未完成」ながら充分に完成された音楽と感じられないこともございません。
第1楽章は、シューベルトが時として垣間見せる暗黒の音楽。チャイコフスキーの「悲愴交響曲」をも凌ぐのではないかと思わせる暗さは、この時代の交響曲としては類例がございません。そして、牧歌ふうに始まる第2楽章は、これはもう彼岸の音楽でございます。私個人としては、このあとにはどんな音楽も続けることはできないのではないかと愚考しております。

ここではオットー・ジンガーという人が2台ピアノ用に編曲したものを使用いたしました。
ピアノで演奏された「未完成交響曲」、お楽しみいただければ幸甚でございます。


交響曲第7番ロ短調D.759「未完成」・全曲連続再生 

第1楽章/アレグロ・モデラート(I. Allegro moderato) 
第2楽章/アンダンテ・コン・モート(II. Andante con moto) 

◇「あそびのピアノ連弾」に戻ります◇
◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集
◇編 曲:O. ジンガー ◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma