サティ/梨の形をした3つの小品
(Erik Satie : Trois Morceaux en forme de Poire)
サティは1880年代の後半から1890年代にかけて、「ジムノペディ」や「グノシェンヌ」など、ピアノ曲を中心にユニークな作品を発表しました。これらは一般の注目を惹くことはありませんでしたが、ドビュッシーやラヴェルなど、一部の作曲家はその独特の世界に魅力を感じ、ドビュッシーなどは「ジムノペディ」から2曲をオーケストレーションし、世間に広めようとさえいたしました。

サティとドビュッシーは後年仲違いしてしまうのですが、まだ仲のよかった1903年のこと、ドビュッシーはサティに「もっと形式にこだわった作品を書いてみてはどうか」と忠告します。
おそらくですが、ドビュッシーとしては、よりしっかりした形式感を備えることで、サティの音楽はもっと受け入れやすくなると考えたのではないでしょうか。

これに応えてサティが書いたのが、この「梨の形をした3つの小品」でございます。
たしかに各曲には調性、小節線の存在、きちんとした拍子など、「形式にこだわった」といえる点もありますが、「梨」はフランスでは「うすのろ」や「まぬけ」の意味もあり、曲名からしてまともにドビュッシーの忠告に従ったとはとうてい思えません。
そもそも「3つの小品」と題しながら、実際には7曲で構成されているなど、いかにもサティらしい人をくった態度でございます。

全曲は、中核となる「3つの小品」を中央に配し、前後に2曲ずつの小曲を置くという構成になっております。曲名と関連付けるならば、「3つの小品」が果実で、前後の4曲はそれを包む梨の皮といったところでしょうか。
ちなみに、最初の「始まりのようなもの」は「グノシェンヌ」第1番と共通の楽想をもっておりますが、これは1891年の「星たちの息子」の曲として作曲されたものを1897年頃に改作して「グノシェンヌ」とし、さらにこの曲に流用されたものでございます。サティお気に入りの旋律だったのかもしれません。


梨の形をした3つの小品・全曲連続再生 

始まりのようなもの(Manière de Commencement) 
同じものの延長(Prolongemente du même) 
小品T(I. Lentement) 
小品U(II. Enlevé) 
小品V(III. Brutal) 
付け加えて(En plus) 
言い直し(Redite) 

◇「あそびのピアノ連弾」に戻ります◇
◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma