サン=サーンス/交響曲 第3番 ハ短調 作品78 (Saint-Saëns : Symphony No.3 in C minor Op.78) |
19世紀のフランスの音楽界は、ドイツ・オーストリアとは大いに異なり、交響曲の分野ではまことに寂寞とした感がございます。ベートーヴェン亡き後、もっとも早く偉大な交響曲を発表したのは他ならぬベルリオーズでございましたが、それに続く交響曲の大家はついに現れることなく、19世紀のフランスは、シューマン、ブルックナー、ブラームス、マーラーらと肩を並べる交響曲作家をもたずに終わりました。 しかしながら、そのようなフランスにも、19世紀を彩る歴史的価値を持った交響曲が少なくとも3曲はございます。19世紀の初めには前述のベルリオーズの「幻想交響曲」、そしてこの世紀の終わりに近く、フランクのニ短調とサン=サーンスの第3が現れ、孤軍奮闘ながらもフランス交響曲の意地を見せております。
サン=サーンスは番号のない2曲も含めて5つの交響曲を完成しておりますが、そのうち4曲までがごく若い時期に書かれたもので、第3交響曲だけが1886年、51歳という円熟期の作でございます。しかもサン=サーンスは、その後30年以上も生き、最晩年に至るまで矍鑠(かくしゃく)として作曲を続けたにもかかわらず、もう交響曲を書くことはありませんでした。
第3交響曲は、第4ピアノ協奏曲や第1ヴァイオリン・ソナタで成功した2楽章構成をとっております。これはサン=サーンス独自の形態ですが、一般の目を惹いたのはなんといってもその管弦楽編成、とりわけパイプ・オルガンとピアノ連弾の導入でございました。オルガンの効果は誰の耳にも鮮やかに響き、この交響曲は今日に至るまで「オルガン付き」のニックネームで親しまれております。
主要な主題または基本動機は第1部にすべて現れます。
【基本動機A・第1楽章第1部序奏】
【基本動機B・第1楽章第1部主部】 基本動機Aは序奏に現れ、基本動機Bは第1部のアレグロ・モデラートの第1主題そのものでございます。この楽章はソナタ形式の第1部と、ポコ・アダージョの第2部から成りますが、以下に基本動機から生成した楽想の例を挙げておきましょう。
【第1楽章第1部・Aによる】
【第1楽章第1部・Aによる】
【第1楽章第1部・Bによる】
【第1楽章第2部・Aによる】 第2楽章はスケルツォ(第1部)と経過部(第2部)およびソナタ形式のフィナーレ(第3部)から成り、ここでは交響曲としては破格の絢爛たる色彩感に溢れた豪壮な音楽が展開いたします。
【第2楽章第1部・Bによる】
【第2楽章第1部・Bによる】
【第2楽章第1部・Aによる】
【第2楽章第2部・Aによる】
【第2楽章第3部・Aによる】
【第2楽章第3部・Bによる】
【第2楽章第3部・Bによる】
【第2楽章第3部・Aによる】 こうして見てみますと、この交響曲は実によく考え抜かれて書かれており、ほぼ同時期のフランクの、謹厳重厚なニ短調とはまったく異なるものの、この時代のフランス交響曲を代表する傑作であることをあらためて痛感いたします。
さて、ここで取り上げました2台ピアノ用の編曲は、レオン・ロケ(Léon Roque:1839-1923?)によるもので、2台ピアノと申しましても、八手すなわち連弾2組のためのアレンジでございます。ロケという人は、いろいろな曲をピアノ用に編曲しておりまして、専門の編曲家だったようですが、詳細は不明でございます。 |
交響曲第3番 ハ短調 作品78・全曲連続再生 | |
第1楽章/アダージョ ― アレグロ・モデラート ― ポコ・アダージョ (I. Adagio - Allegro moderato - Poco adagio) | |
第2楽章/アレグロ・モデラート ― プレスト ― マエストーソ ― アレグロ (II. Allegro moderato - Presto - Maestoso - Allegro) | |
◇あそびのピアノ連弾に戻ります◇ | |
◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集様 | |
◇編 曲:L. ロケ ◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma |