サン=サーンス/ピアノ協奏曲 第4番 ハ短調 作品44
(Saint-Saëns : Piano Concerto No.4 in C minor Op.44)

サン=サーンスは生涯に5曲のピアノ協奏曲を残しておりますが、その中でとりわけ重要な作品はこの第4番でございましょう。
1875年、作曲者40歳の年に書かれたこの曲は、循環形式によるユニークな構成とヴィルトゥオーゾ的な演奏効果が緊密に結びついた傑作で、後年の第3交響曲とともに、サン=サーンスの器楽の大家としての一面を代表しております。

第4ピアノ協奏曲は、2楽章から成っております。それぞれの楽章はまた大別して2つの部分でできており、伝統的な4楽章構成が2つの楽章に組み込まれた形とも申せましょうが、各楽章の各部分はきわめて有機的につながっており、単に2つの楽章を休止なしに接続したというものではございません。
また、循環主題を用いて全曲を統一しているのもこの曲の特徴で、フランクが循環形式を大規模に用いた作品を発表するより早い時期に、これほど緊密な曲を書き上げていたサン=サーンスの存在意義は、充分再評価に値するものと存じます。

第1楽章はアレグロ・モデラートの第1部とアンダンテの第2部から成りますが、第1部が通常のソナタ・アレグロでなく変奏曲になっているのは、19世紀のピアノ協奏曲としてはきわめて異色でございます。
変奏曲の主題は第1の循環主題(循環主題A)で、第1部の終わりには第2の循環主題(循環主題B)が現れます。

【循環主題A】

【循環主題B】

第2部は緩徐楽章に相当する部分ですが、振幅が大きく変化に富んだ音楽となっております。ここに現れる2つの主題は、ともに第3、第4の循環主題(循環主題C・D)でございます。

【循環主題C】

【循環主題D】

第2楽章はアレグロ・ヴィヴァーチェとアレグロの2つの部分で構成されますが、間にブリッジとしてアンダンテの部分を含んでおります。
第1部分は明記されてはおりませんが、明らかに2拍子のスケルツォで、循環主題Bを主要主題、循環主題Aを副主題としております。 スケルツォに続いて循環主題Dによるアンダンテが第2部への導入を成し、盛り上がったところでアレグロの第2部が始まります。この部分はこの協奏曲唯一のソナタふうアレグロで、循環主題C、循環主題Dが主要な楽想として扱われます。ここで現れる循環主題Cによるシンプルかつ明朗な第1主題は、おそらく一度聴いたら忘れられないほど印象的な旋律でございます。

【循環主題Cによる第1主題】

さて、ここで取り上げました2台ピアノ用の編曲は、なんとあのフォーレの手に成るものでございます。フォーレは若い頃ピアノと作曲をサン=サーンスに師事しており、その後も二人の親交は続きました。19世紀の終わり近くなると、フォーレの作風の変化にサン=サーンスはついていけなくなったようで、かつての弟子の歌曲集「優しい歌」を聴いたサン=サーンスは「フォーレは発狂した」などと発言したりもしておりますが、交友関係自体は壊れなかったようでございます。
フォーレがこの曲を編曲したのは初演後間もない1876〜77年頃のこと。どういう経緯で編曲することになったのかは残念ながら存じませんが、ともかく大作曲家の作品をもうひとりの大作曲家がアレンジしたということで、興味深い編曲ではございます。


第1楽章/アレグロ・モデラート ― アンダンテ (I. Allegro moderato - Andante) 
第2楽章/アレグロ・ヴィヴァーチェ ― アンダンテ ― アレグロ  
       (II. Allegro vivace - Andante - Allegro) 

ピアノ協奏曲第4番ハ短調 作品44・全曲連続再生 

◇あそびのピアノ連弾に戻ります◇
◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集
◇編 曲:G. フォーレ ◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma