ルビンシテイン/ピアノ連弾のためのソナタ ニ長調 作品89 (Anton Rubinstein : Sonata for Piano Four Hands in D major, Op.89) |
アントン・ルビンシテインは19世紀ロシアのピアニスト・教育者として偉大な足跡を残しておりますが、作曲家としての名声は死後急速に失われ、その膨大な作品の多くは今日顧みられることがございません。知名度の大きさにもかかわらず、忘れられた作曲家のひとりに名を連ねていると申してもよろしいでしょう。 ドイツで修行を積み、ロシア最初の音楽学校の創立者となったルビンシテインは、ロシアにドイツ流の正統的音楽技法を根付かせようと努めました。音楽学校の第1期生であったチャイコフスキーは、ルビンシテインの厳格な指導に感謝しつつも、恩師の自作に対する冷淡な評価についての恨みごとを、卒業してから15年も経た時期の日記の中で述べております。 |
ベートーヴェンを敬愛し、メンデルスゾーンとシューマンに同時代の音楽の理想像を認めていたルビンシテインにとって、チャイコフスキーの音楽は、なにやら鼻持ちならないものに感じられたのかもしれません。
ここに取り上げた作品は、ルビンシテイン唯一の、ピアノ連弾(1台4手)のためのソナタでございます。
それはともかく、この曲は3楽章から成っておりますが、全体の構成は少々特異でございます。
この作品を取り上げましたのは、世間にはありそうで意外に少ない「連弾用のソナタ」という曲種に興味を惹かれたのが最大の理由でございます。 |