ローリー/クリスマス・キャロル
Arec Rowley : A Cristmas Carol
suggested by Charles Dickens' immortal story

アレック・ローリーは1892年に生まれ1958年に亡くなった、ロンドン出身の作曲家でございます。主としてピアノ曲の分野で作品を残し、ピアノ連弾でも演奏者として活動したようでございます。
ローリーの同時代には、古い世代ではヴォーン=ウィリアムズ(1872〜1958)やホルスト(1874〜1934)、ほぼ同世代ではバックス(1883〜1953)とウォルトン(1902〜1983)、新しい世代としてはブリテン(1913〜1976)といった錚々たる顔ぶれが腕を競い合っており、小粒な作品の多いローリーのような作曲家はそれらの面々の陰に隠れて、話題に上ることはまずございません。私も、今回クリスマスに因んだ曲を探していて、初めてこの作曲家の名前を知った次第でございます。
Arec Rowley
さて、ローリーは1921年、29歳の年に「クリスマス・キャロル」という作品を作曲しております。これは2部全9曲から成る組曲ふうのピアノ曲集で、ディケンズの小説に基づいた音楽でございます。

クリスマスに因んだ数多くの物語の中でも、イギリスのベストセラー作家チャールズ・ディケンズ(Charles John Huffam Dickens, 1812〜1870)の「クリスマス・キャロル」は、もっとも有名なもののひとつと申せましょう。

Cherles Dickens 1843年に発表されたこの心あたたまる小説は、原作そのものはもちろんのこと、舞台化・映画化・ミュージカル化され、現在に至るまで世界中で親しまれております。
冷酷な守銭奴じみた商人スクルージが過去・現在・未来のクリスマスの精霊の導きを受け、自らの来し方・行く末を見据えて改心し、人間らしい心を取り戻すというストーリーは、いささか勧善懲悪の気味はあるものの、いかにもクリスマスにふさわしい物語と申せましょう。

発表されて以来、150年以上にわたって多くの人々に愛され続けてきたディケンズのこの小説から、ローリーは以下のような9つの場面を選んで音楽化しております。

《第1部》
  第1曲:クリスマス・イヴ
  第2曲:マーレイの幽霊
  第3曲:第1の精霊
  第4曲:フェジウィッグ氏の舞踏会

《第2部》
  第5曲:第2の精霊
  第6曲:心の目覚め
  第7曲:第3の精霊
  第8曲:救済されたスクルージ
  第9曲:クリスマスの日

ひとつひとつの曲はどれもごく短く、曲によっては終止感のないものもございます。おそらく作曲者の意図は、全曲が続けて演奏される、あるいは最低でも第1部、第2部がそれぞれひとつのまとまりとして連続して演奏されることにあったのでしょう。
作曲のスタイルは融通無碍で、伝統的な和声法から20世紀的な自由な和声書法まで、必要に応じて使いこなしております。親しみやすく聴きやすい反面、これといった個性のようなものが感じられないのが弱点かもしれません。

各曲の楽譜の冒頭には、作曲者自身の手によって、原作からの引用という形で場面の説明が書き込まれております。この説明につきましては、弊サイトでは各曲に「前口上」という形で付けておくことにいたしました。曲をお楽しみいただく際の参考にしていただければ幸甚でございます。


「クリスマス・キャロル」〜第1部〜
 クリスマス・イヴ (Christmas Eve)  ◇前口上
 マーレイの幽霊 (Marley's Ghost)  ◇前口上
 第1の精霊 (The First of the Three Spirits)  ◇前口上
 フェジウィッグ氏の舞踏会 (Mr.Fezziwig's Ball)  ◇前口上
 「クリスマス・キャロル」第1部・全曲連続再生 

「クリスマス・キャロル」〜第2部〜
 第2の精霊 (The Second of the Three Spirits)  ◇前口上
 心の目覚め (The Awakening)  ◇前口上
 第3の精霊 (The Last of the Spirits)  ◇前口上
 救済されたスクルージ (Scrooge's Redemption)  ◇前口上
 クリスマスの日 (Christmas Day)  ◇前口上
 「クリスマス・キャロル」第2部・全曲連続再生 

 「クリスマス・キャロル」・全曲連続再生 

◇あそびのエトセトラに戻ります◇
◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集
◇MIDIデータ作成・訳:Jun-T ◇録 音:jimma