ヴォーン・ウィリアムズ/交響曲第5番 ニ長調 (Ralph Vaughan Williams : Symphony No.5 in D major) |
この作品は、1938年から43年まで、およそ5年ほどの歳月をかけて作曲されたヴォーン・ウィリアムズ5番目の交響曲でございます。 第2次世界大戦直前の時期に起草され、戦争のさなかに書き上げられたわけですが、その曲想は全体的に静謐で穏やかなものであり、一見したところ戦時の雰囲気は感じられません。1934年に完成された第4交響曲に示された暴力的な激しさとは対極にあるような音楽で、それ以前の「田園交響曲」の時期に回帰したような趣きさえ感じられます。 曲は1943年の6月に作曲者自身の指揮によって、防空管制下のロンドンで初演されました。戦意高揚とは無縁の音楽ではありましたが、作品に込められた一種祈りにも似た詩情は聴衆に大きな感銘を与え、初演は大成功を収めました。 以来、この作品はヴォーン・ウィリアムズの交響曲の中ではもっとも演奏回数の多いもののひとつに数えられます。 なお、曲は作曲者が敬愛しておりましたシベリウスに献呈されております。 全曲は4つの楽章で構成されております。その意味では伝統的な形に添っているようですが、第2楽章を除くと全体的に緩やかなテンポの音楽になっている点はこの作曲家らしいところでございます。
「あそびの音楽館」では、このユニークな作品を2台のピアノ用にアレンジいたしました。 |