変化のない主題によるパラフレーズ (Chopsticks Paraphrases) |
19世紀の60年代、ロシア楽壇に強烈なインパクトを与えたいわゆる「五人組」、すなわちバラキレフのグループの人々のうち、ボロディン、キュイ、リムスキー=コルサコフの3人はとりわけ仲がよく、しばしば互いの家を訪問しては音楽を楽しんでおりました。3人のうち、職業音楽家はリムスキー=コルサコフだけで、ボロディンは化学者、キュイは陸軍士官と、それぞれ本業を持ったアマチュアだったこともあるのでしょうか(リムスキー=コルサコフも初めは海軍士官でした)、内輪で気楽に楽しむための「あそび」の要素をもった合作曲をいくつか残しております。 この「パラフレーズ」も合作曲で、誰の発案だか存じませんが、指2本(左右の人差し指1本ずつ)だけで弾けることから「チョップスティックス」の愛称をもつ単純なメロディに基いたピアノ連弾曲を作ってみよう、ということになりました。
◆主題(チョップスティックス)◆
作曲を始めたのは1874年頃のことで、合作に参加したメンバーは、ボロディン、キュイ、リムスキー=コルサコフと、リムスキー=コルサコフの弟子リャードフも交えた4人でございました。 「パラフレーズ」は、1曲の変奏曲と16曲の小品で構成されております。ピアノ連弾曲とはいえ、実際には3本の手のために書かれており、一方の奏者(プリモ)は最初から最後まで、ただひたすら「チョップスティックス」のメロディを繰り返すという、パッサカリアのパロディみたいなルールですべての曲が作られております(ただし、リストの曲だけは例外です)。 それぞれの曲の作曲者は、以下のようになっております。
1. キュイ、リムスキー=コルサコフ、リャードフ:24の変奏曲とフィナーレ 「24の変奏曲とフィナーレ」につきましては、ひとつの曲を3人で手分けして作るということをやっております。ご参考までに、各変奏の分担を記しておきましょう。
キュイ:第3・5・8・17・18変奏とフィナーレ 内輪で楽しむことから始まったこの「パラフレーズ」、どの曲にも思いのほか力が入っておりまして、それぞれの作曲家が音楽あそびを真剣に楽しんでいる様子がうかがわれ、なんだか微笑ましいような気持ちにさせられてしまいます^^ |
(2009.5.31〜7.1) |