ニールセン/交響曲第2番 ロ短調 作品16「四つの気質」 (Nielsen : Symphony No.2 in B minor, Op.16 "Four Temperaments") |
ニールセンはデンマーク最大の作曲家であるとともに、マーラーやシベリウスと並んで、20世紀前半を代表する交響曲作家のひとりでございます。 とりわけニールセンとシベリウスは生年も同じ1865年、主な活動時期も1890年代から1930年頃までと、まさに同時代の作曲家でございますが、その受容史は相当に異なります。シベリウスが20世紀の初め頃からイギリス、アメリカを中心として国際的に受容され、1930年代には世界的にその名声が轟いたのに対し、ニールセンの国際的な認知度はそれほど高くなく、重要な作曲家として扱われるようになったのは第2次世界大戦後のことでした。 |
その後も爆発的に人気が上がることはなかったとはいえ、着々と愛好者を増やし、現在ではシベリウスと遜色のない交響曲作家として認められていると思われます。
デンマーク出身の作曲家としては、なんと申しましてもまずバロック期のブクステフーデ(Dieterich Buxtehude, 1637?〜1707)の名が挙げられます。バッハに先駆けてオルガン曲や声楽曲で活躍した大家ですが、その後デンマークにはこれといった人物が現れず、ようやく19世紀に入ってから、ゲーゼ(Niels Wilhelm Gade, 1817〜1890)が出て、国際的な名声を獲得いたします。ゲーゼはメンデルスゾーンの系統のロマン的交響曲を残した人ですが、この人がコペンハーゲン音楽院の院長の時にニールセンの才能を見出し、受験に失敗したニールセンを特例で合格させておりますので、ゲーゼはニールセンの恩人と申してもよろしいかと存じます。
ニールセン(実際の発音は「ネルスン」に近いようですが、ここではわが国での一般的な表記に従います)は貧しいペンキ職人の家に生まれ、音楽院を卒業後も王立劇場のオーケストラでヴァイオリンを弾いて暮らしており、早い時期から国家年金を受けて作曲活動に専念できたシベリウスとは生き方もだいぶ異なります。 さて、ニールセンは交響曲を6つ残しておりますが、ブラームスをはじめとする19世紀ドイツ・ロマン派の影響著しい若書きの第1番(作品7、1892年)を除く5曲は、いずれも独特の味わいをもっており、しかも互いにあまり似ていないという点で、ニールセンの幅の広さを明示しております。一般的に有名なのはなんと申しましても単一楽章の第4交響曲(作品29「不滅」、1916年)ですが、最高傑作はおそらく2楽章構成の第5交響曲(作品50、1922年)ということになりましょう。しかしながら、ヒロイズムと牧歌的情緒が絶妙にブレンドされた第3交響曲(作品27「広がり」、1911年)、軽妙洒脱で急進的な手法を織り込んだ第6交響曲(作品番号なし「シンプル」、1925年)もそれぞれに魅力に富んでおります。
ここで取り上げました第2交響曲は、「四つの気質」というタイトルを持っております。これはニールセン自身が名づけたもので、とある居酒屋で目にしたヒポクラテスの四体液説を面白おかしく描いた絵にインスピレーションを得たものということでございます。
胆汁質……荒々しく怒りっぽい。短気で行動的、野心も大きい。 このような気質の分類が交響曲の4つの楽章の性格付けにうまく当てはまるということに興味を抱いて、ニールセンはこの作品を書き上げたのかもしれません。
今年(2015年)はニールセン生誕150年にあたりますので、「あそびの音楽館」では、この作品をピアノ連弾で音にしてみることにいたしました。 |
交響曲第2番ロ短調 作品16「四つの気質」・全曲連続再生 | ||
第1楽章:アレグロ・コッレリコ(I. Allegro collerico) | ||
第2楽章:アレグロ・コモード・エ・フレマティコ(II. Allegro comodo e flemmatico) | ||
第3楽章:アンダンテ・マリンコリコ(III. Andante malincolico) | ||
第4楽章:アレグロ・サングィネオ(IV. Allegro sanguineo) | ||
◇あそびのピアノ連弾に戻ります◇ | ||
◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集様 | ||
◇編 曲:H. クヌートセン ◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma |