ムソルグスキー/展覧会の絵 (Mussorgsky : Tableaux d'une Exposition) | ||
19世紀ロマン派の時代には多くのピアノのための名作が生まれましたが、ロシアでは意外にこのジャンルでの特筆すべき作品は品薄といわざるを得ません。 グリンカ、アントン・ルビンシテイン、キュイ、チャイコフスキーなど、比較的多くのピアノ曲を残した人も少なくはないのですが、際立って優れた作品は見当たりません。ピアノ曲で重要な仕事をしたスクリャービンやラフマニノフが活躍するのは、19世紀の終盤から20世紀にかけてのことになります。 そのようなわけで、19世紀ロシアのピアノ曲のジャンルにおいて、圧倒的にその存在感を示している名作といえば、ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」一択と申してよろしいかと存じます。
ムソルグスキーがこの組曲を書いたのは1874年。オペラ「ボリス・ゴドゥノフ」の改訂版が初演され、ムソルグスキーの創作力が上り坂にあったこの時期、遅筆なこの作曲家にしては3週間足らずという驚異的なスピードで、一気に書き下ろされたようでございます。
作品を救ったのはリムスキー=コルサコフでございました。
オーケストラ版「展覧会の絵」の成功は、原曲のピアノ曲にも光を当てました。いろいろなピアニストがこの曲をプログラムに加えるようになりますが、当初はリムスキー=コルサコフ校訂の出版譜のみが演奏されました。これはリムスキー=コルサコフが当時の聴衆に受け入れられやすいように原曲に修正を加えたもので、一部にはムソルグスキー本来の持ち味を損なうものとの批判もございました。しかし、当時出版譜としてはこれしかなかったため、ラヴェルもこの楽譜に基づいてオーケストレーションしております。
組曲「展覧会の絵」で音楽化されたハルトマンの絵は10点ですが、ムソルグスキーはこれらの曲を単に並べるだけでなく、「プロムナード」と題された音楽で各曲を接続しました。これはきわめてユニークな手法であり、ひとつの絵から次の絵へと移り歩くムソルグスキー自身を描くという、メタな構造を生み出しております。 なお、各曲の曲名については、内容に応じていろいろな言語が用いられております。もしかするとハルトマンの絵の題名がそうなっていたのかもしれませんが、少しばかり興味を惹かれます。
「プロムナード」→フランス語 ここでは、ラムの校訂による楽譜を用いました。お楽しみいただければ幸甚でございます。 | ||
展覧会の絵・全曲連続再生 | ||
プロムナード〜ノーム(Promenade - Gnomus) | ||
プロムナード〜古い城(Promenade - Il vecchio castello) | ||
プロムナード〜テュイルリーの庭(Promenade - Tuileries) | ||
牛車〜プロムナード〜卵の殻をつけた雛の踊り (Bydlo - Promenade - Ballet des poussins dans leurs coques) | ||
サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ〜プロムナード (Samuel Goldenberg und Schmuÿle - Promenade) | ||
リモージュの市場〜地下墓地〜死せる言葉による死者への呼びかけ (Limoges - Catacombae - Cum mortuis in lingua mortua) | ||
鶏の足の上に建つ小屋〜キエフの大門 (La cabane sur des pattes de poule - La grande porte de Kiev) | ||
◇あそびのエトセトラに戻ります◇ | |
◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集様 | |
◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma |