モーツァルトの40曲以上に及ぶ交響曲のうち、1783年以降に書かれた6曲(序奏のみ作曲の第37番を除く)は「六大交響曲」といわれておりますが、第35番のこの曲はそれら後期交響曲の傑作群の最初のものでございます。
ハフナー家はザルツブルクの富豪で、モーツァルトはこのハフナー家の依頼で2曲のセレナードを作曲しております。1776年の作品は今日「ハフナー・セレナード」として知られる曲で、その後1782年、ハフナー家が貴族に列せられた際の祝賀用に、モーツァルトは2番目のセレナードを作曲しました。
翌1783年、予約演奏会のプログラムに新作の交響曲を必要としたモーツァルトは、前年に書いたセレナードを交響曲に改作して間に合わせることにしました。これが第35番の交響曲で、そのような経緯から「ハフナー」のニックネームをもっております。
セレナードからの改作とはいえ、さすがに1780年代の作らしく、実に充実した交響曲でございます。音楽に立体感をもたらす対位法の手法、次々に繰り出される新鮮な楽想など、この時期のモーツァルトの魅力全開の作品と申せましょう。
編曲はウルリヒ(Hugo Ulrich;1822〜1872)という人の手になるもので、四手のピアノ連弾のためにアレンジされております。
ピアノで演奏されたハフナー交響曲、お楽しみいただければ幸甚でございます。