貴志 康一/作品集

貴志康一は大阪出身の音楽家でございます。最初は画家を目指したそうですが、色弱のため絵画の道を断念し、11歳の頃から習っておりましたヴァイオリンを本格的に勉強して職業音楽家となりました。
ヴァイオリニストとしてスタートを切った貴志康一ですが、やがて指揮・作曲の分野でも頭角を現し、26歳以降は有能な指揮者として華やかな演奏活動を展開しました。
フルトヴェングラーとも交流があり、ベルリン・フィルを指揮して自作を発表するなど、目を瞠るような活躍を見せた貴志康一でございますが、わずか28歳にして腹膜炎のため世を去りました。瀧廉太郎同様、あまりにも早すぎる死でございます。

正直な話、私はこの作曲家を存じませんでしたが、「梅丘歌曲会館・詩と音楽」のFUJII様が「かごかき」を取り上げておられるのを拝読して興味をもち、「甲南学園・貴志康一記念室」を経由して貴志康一刊行委員会発行の「貴志康一作品集」を入手してみました。
この作品集には8曲の歌曲と6曲のヴァイオリン曲の楽譜が収録されておりますが、一読してまずその濃厚な和風の響きの連続に驚かされました。瀧廉太郎がシューベルトだとすれば、貴志康一はムソルグスキーというところでしょうか。とにかくコテコテの日本ふう、という感じなのでございます。
とはいえ、単に日本的な旋法や和声を使っているというだけでなく、書法にモダンな感覚が満ちているのは、さすがに20世紀の作曲家と思わせ、なかなかに面白い作品集でございます。

「あそびの音楽館」では、「貴志康一作品集」からいくつかの作品をご紹介させていただくことにいたしました。
長命であったならば日本音楽の歴史に大きな影響を与えたかもしれないこの作曲家の作品、はたしてみなさまにお楽しみいただけるでしょうか?


かごかき(Kago-Kaki)  曲について
風雅(みやび)小唄(Miyabi-Kouta)  曲について
八重桜(Yae-Zakura)  曲について
行脚僧(Angya-So)  曲について
天の原(Ama-No-Hara)  曲について

竹取物語(Taketori-Monogatari)  曲について
龍(Ryu)  曲について

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◇背景画像提供:フリー写真素材Canary様
◇編 曲・MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma