ホルスト/組曲「惑星」作品32 (Gustav Holst : The Planets, Op.32) |
ホルストがこの組曲に着手したのは1914年、完成したのは1917年でございます。当時占星術に惹かれていたホルストは、そこからアイディアを得て、この作品を着想いたしました。しかしながら、太陽系の惑星を音楽化するという試みは、20世紀前半の科学文明礼賛の風潮にマッチし、しかも外見上モダンでありながら聴きやすさも兼ね備えた作品として、「惑星」は大いにヒットいたしました。 作曲者の没後、しばらく演奏機会が減ったこともございましたが、1960年代から再び注目され、今日ではホルストの名を知らなくても「惑星」、とりわけ第4曲「木星」は世界的に有名な曲になっていると申せましょう。
ホルストは初め、この作品を2台ピアノのために作曲いたしました。また、最終曲の「海王星」はオルガンのために書いております。ただし、作曲者としては、当初からオーケストラのための作品として構想していたのですが、腕の神経炎のため、自分の手でオーケストレーションできず、「水星」を除く6曲は友人や弟子の助力によって管弦楽配置を完了しました。 初演は1920年10月にバーミンガムで行われ、大成功を収めました。初演後は、この曲ばかりがもてはやされ、ホルストといえば「惑星」という状況になったのを、作曲者自身はやや苦々しく思っていたようでございます。このあたり、「フィンランディア」が代名詞のようになってしまったシベリウスの気持ちに通じるものがあったのではないでしょうか。
さて、全曲の構成ですが、「惑星」の各曲は必ずしも太陽から近い順に並んでいるわけではございません。曲の配列には占星術が関係しているらしいのですが、詳しくは存じません。
前述したように、この2台ピアノ版は通常の意味の編曲とは異なり、オーケストレーションする前の形、すなわち普通の作曲プロセスでいう「スケッチ」にほかなりません。巨大なオーケストラで奏でられる「惑星」の、豪華な衣装を身にまとう前の姿がここにあると申せましょう。 |