ハイドン/弦楽四重奏曲第67番ニ長調「ひばり」
(Haydn : String Quartet No.67, in D major "The Lark")

F.J.Haydn VSLのDimension Strings(DS)はたぶん失敗です。
Violin8人、ViolaとCelloそれぞれ6人、Contrabass4人でオーケストラができるでしょうか?
人数の少なさをひとまず措いても、単純にVnのソロを複数重ねてもオーケストラのVnのパートの音にはならないだろう、というのが私の直感的な予想です。
私がDSを買うことにした理由は、ソロがいくつかあるので、その一部を使って室内楽ができるんじゃないかと思ってしまったこと、2012年当時DSはまだVnしかできていない状態で、一部予約販売というような形で大幅な割引販売をしていたことです。
たとえば、オーケストラの団員の中の何人かが集まってアンサンブルをするというのは、普通に行われることですよね?それと同じことがDSでできたら、今まで楽器がなくて手が出せなかった弦楽六重奏、八重奏も余裕で賄えるはずだったんですよ。
VSLときたら、Solo Stringsといいながら、楽器は1種類ずつしか収録していないので、弦楽四重奏もままならなかったですからね。
とはいえ、Solo Stringsは、今まで購入したVSLの音源で、私が唯一買ってよかったと感じた音源で、それなりに使ってもきました。
最初はGiga Studio版で、使い始めたのは2005年のことです。その後Vienna Instruments(VI)エンジンとなり、奏法が増えて多少の改良はありましたが、私が問題と思っていたループがないのはそのまま、Vnが1つしかないのもそのままででした。
ループ処理をしていないと弦楽器ではボーイングで普通に長く伸ばせるはずなのに、長い音符で音が切れてしましますからね。収録楽器の少ないことについては、VIになっていつの間にかパッチリストの中にそれまでなかったViolin 2というフォルダが現れたんですよ。これはおそらく2nd Violinを求めるユーザーからの要望が多かったので、ごく一部のパッチについてチューニングをずらすなどの処理をして拵えたものでしょう。しかし、私にとって必須のパッチが入ってなかったことと、一部のパッチだけだったので、ユニゾンのときに困る場面がでてくることは解消されませんでした。
そこでDimension Stringsに期待が高まります。2012年の暮れにVnの音を聴いて、これは・・・サンプリングのやり直しだろうとひどく失望して、すぐにDSのVnを使って何か曲をしようという気にはなれませんでした。つなぎ目がはっきりと分かるような拙いものながらループ処理がしてあることを除いたら、以前のSolo Stringsに音がはっきりと劣るんです。8人分のサンプリングをしなければならないので、容量の制約があったのか奏法の種類も大幅に削減されていました。私にとって大きな痛手だったのは、速いパッセージでいつも使っていたパッチ(sus_vib_fA)がなくなっていたことです。これがないと、Performance Legatoを使うしかなくなりますが、このPerformance Legatoというのは使い勝手が悪くて、私のところではほとんど出番はありませんでした。sus_vib_fAは、QLSOのレガートのパッチに似た感じで、速いテンポでの短い音も発音してくれるし、音を短くすればスタッカートにも使えて便利だったのですがね。1つのパッチでいろんな用途に使えるというのは楽です。

1週間ほど前、DSも今年の1月でVn、Va、Vcまで出揃ったことだし、去年から始めては投げ出すということを繰り返してきた、シューベルトの弦楽五重奏曲をDSのみでやってみようと思い、1楽章のVnのパートの最初の方を音を聴きながら手を入れてみるんですが、同じところを何度も何度も繰り返すだけでちっとも捗らないんです。シューベルトは曲が長い上に強弱が細かいので、こんな調子では4楽章まで辿り着く前に老衰で死んでしまいそうです。この曲は今は(ということは一生か?)無理とあきらめて、何かもっと手軽にDSを試すことができる曲ということで、ハイドンの「ひばり」を選びました。

「ひばり」は、中学3年のときに、私が自分のお小遣いで買った最初のレコードに入っていたので、思い出深い曲でもあります。ハイドンの「ひばり」と「五度」というカップリングでした。ハイドンは、中学や高校のときにはよく聴いたものでしたが、歳をとるにつれて興味を失った作曲家のひとりです。そういえば、学生の頃Jun-Tが送ってきたカセット・テープの中に、豊麗な金管が響く曲が入っていて、誰の曲かと思ったら意外にも確かハイドンのオラトリオ「天地創造」でしたか。そのお蔭か、「天地創造」と「四季」のCDだけは持っています。

さて、DSだけを使うという予定で始めた「ひばり」でしたが、最初のVnをやっていて、どうもしっくりこないんですね。音を聴いていて頭が痛くなります。これならSolo StringsのVnを使った方がまだいい結果が得られるだろう、ということでVn1にDSを使うことを諦めました。次にVn2のパートをDSで鳴らしていて、Performance Legatoを使ったところで、何じゃこりゃ?ということが起こりました。そんなに速いパッセージでもないのに、DSのPerformance Legatoでは発音しきれず、他のパートと合わせると聴き取れないのです。レガート用のパッチと言いながら、私には自然なレガートには聴こえません。言葉で説明するのは難しいんですが、アタック部分やレガートで音が移行する間の音程が揺れるような感じだったり、付点音符などでリズムが変わったように聴こえたりします。私が常々使ってきたsus_vib_fAの方がよっぽどすっきりと違和感なく聴こえます。VSLが長年Performance Legatoにこだわる理由は、私には理解できないところです。

というわけで、Vn2,Va,Vcには、DSのPerformance Legatoはやめて、Solo Stringsのsus_vib_fAのパッチを使うことにしました。さらに、DSのスタッカートはあまりに硬い音色で、場所によって変に聴こえたので、1部Solo Stringsのスピッカートで代用しました。

その結果として、Dimension Stringsでは、頭数だけは十二分にあるものの、単体では弦楽四重奏すらできない、ということが判りました。


 第1楽章/アレグロ・モデラート(I. Allegro moderarto) 
 第2楽章/アンダンテ・カンタービレ(II. Andante cantabile) 
 第3楽章/メヌエット:アレグレット(III. Menuetto : Allegretto) 
 第4楽章/フィナーレ:ヴィヴァーチェ(IV. Finale : Vivace) 

 弦楽四重奏曲第67番ニ長調「ひばり」・全曲連続再生 

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◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集
◇編 曲・MIDIデータ作成:jimma ◇録 音:jimma