アーン/ピアノのためのソナチネ ハ長調
(Reynaldo Hahn : Sonatine pour Piano en Ut majeur)

ベネズエラ出身でフランスに帰化したアーンはいわゆる神童で、10歳でパリ音楽院に入学、当時フランス・オペラの大家として君臨していたマスネに目をかけられ、15歳頃から次々に出版された歌曲によって、20歳までには著名な歌曲作曲家としてフランス楽壇における地位を確立いたしました。

アーンはラヴェルと同時代人で交流もあったようですが、この世代の著名作曲家としてはきわめて古風なスタイルをとっております。
アーンが活動した19世紀終盤から20世紀の初めにかけて、フランスでは19世紀ロマン派の流れを受け継ぐフォーレやフランキストたち(デュパルク、ダンディ、ショーソンなど)、革新的なドビュッシー、新古典主義的なデュカやルーセル、ラヴェルのような人々が活躍しておりました。その中にあって、アーンはいわば「擬古典主義」とでもいえそうな作風で際立っております。
1907年に作曲された「ソナチネ」にもその特色は明確で、一見したところ何の変哲もない18世紀古典派の手法で書かれているように思えます。実際には、20世紀らしい音遣いも用いられているのですが、全体としてはあまりにも古典派のスタイルに擬態しているために、その名は同時代の著名作曲家の陰に隠れてしまっていることは否めません。

「ソナチネ」は3楽章から構成され、急・緩・急の伝統的なスタイルで書かれております。
第1楽章はソナチネ形式とはいえあまりにも展開らしい箇所がないので、逆に斬新といえばいえるような気がいたします。
第2楽章は変奏曲で、ここではアーンの旋律的魅力が示されております。
第3楽章は「タンブランふうの形式による終曲」と題される、バロック音楽的な三部形式の音楽です。

歌曲だけで知られるアーンの器楽作品として、多少なりともお楽しみいただければ幸甚です。


ピアノのためのソナチネ ハ長調・全曲連続再生 

第1楽章/アレグロ・ノン・トロッポ(I. Allegro non troppo) 
第2楽章/アンダンティーノ・ルバート(II. Andantino rubato) 
第3楽章/フィナーレ:ヴィーヴォ・アッサイ(III. Finale ; Vivo assai) 

◇「あそびのエトセトラ」に戻ります◇
◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma