グリーグ/ピアノ・ソナタ ホ短調 作品7
(Grieg : Piano Sonata in E minor, Op.7)

グリーグはノルウェーばかりでなく、19世紀の北欧を代表する作曲家でございます。北欧出身の作曲家としては、19世紀前半ではスウェーデンのベルワルド、デンマークのゲーゼ、同時代人としてはノルウェーのスヴェンセンやシンディングが名を残してはおりますが、グリーグの存在はこれらの人々の影を薄くしてしまいました。

オペラや管弦楽の大作をほとんど残さず、主要作品の大部分がピアノ曲と歌曲で占められているため、ともすれば軽量級の作曲家に見られがちなグリーグでございますが、逆にいえば、そのような小品に依りながら、重量級の多い19世紀ロマン派・国民楽派の中で確固たる地位を築いたことは驚嘆に値すると申してよろしいのではないでしょうか。
ブラームス、チャイコフスキー、ドヴォルザークなどは揃ってグリーグの作品を称賛し、ドビュッシーもグリーグを愛好していることを考えますと、一見素朴で慎ましやかなグリーグの音楽には、主義主張や立場を超えて、聴く者の心を掴む大きな魅力が秘められているようでございます。
グリーグが「北欧の小さな巨人」と称される所以でございましょう。

ピアノ・ソナタは1865年、グリーグ22歳の年の作品で、ソナタ形式の両端楽章を含む四つの楽章から成っております。初期のグリーグは積極的に大形式のジャンルに挑戦しており、ヴァイオリン・ソナタ第1番や交響曲(スヴェンセンの交響曲を聴いて自信を失ったグリーグは演奏を禁じました)、有名なピアノ協奏曲はこの時期の作品でございます。
ライプツィヒ音楽院で学び、ドイツ・ロマン派の影響下に書かれたピアノ・ソナタではありますが、独特の和声、民俗的な旋律の使用などはこのような初期の作品にもちらほらと見受けられ、なかなかに興味深い音楽になっていると思われます。

(2007.1.24)

ピアノ・ソナタ ホ短調 作品7・全曲連続再生 

第1楽章/アレグロ・モデラート(I. Allegro moderato) 
第2楽章/アンダンテ・モルト(II. Andante molto) 
第3楽章/アラ・ミヌエット、マ・ポコ・ピウ・レント 
       (III. Alla minuetto, ma poco più lento) 
第4楽章/フィナーレ:モルト・アレグロ(I. Finale : Molto allegro) 

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◇背景画像提供:フリー写真素材Canary様
◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma