フランク/ピアノ五重奏曲 ヘ短調
(C. Franck : Piano Quintet in F minor)

1870年代の終わりから1890年まで、生涯最後の10年あまりはフランクの「傑作の森」と申すべき充実した期間でした。今日演奏されるフランクの作品の大部分は、この時期に集中して書かれております。
ピアノ五重奏曲は、「傑作の森」の開幕を告げる記念碑的作品でございます。1878年から翌年にかけて作曲されたこの曲は、フランク晩年の3つの室内楽作品の最初のものであり、また、その独自性と暗い情熱を秘めた作風によって、楽壇の注目を集めました。
曲はサン=サーンスに献呈され、初演のピアノ・パートもサン=サーンスが担当しましたが、演奏が終わると献呈譜はピアノの上に放置され、サン=サーンスは楽譜の受け取りを拒否しております。フランクはサン=サーンスを敬愛しておりましたが、サン=サーンスはワーグナーに影響を受けたフランクとその弟子たちの音楽的傾向を嫌悪していたのでございます。フランクにとっては気の毒な成り行きでした。

フランクのピアノ五重奏曲は、単に19世紀フランスの室内楽における重要作というだけでなく、このジャンルではシューマン、ブラームスの作品と並ぶ傑作と評価されております。
全曲は3つの楽章から構成され、フランクの代名詞ともいうべき循環形式で書かれております。
第1楽章は長大な序奏をもつソナタ形式で、2つの循環主題が提示され、全般的に厳粛かつ哀感を伴う情熱的な音楽が展開されます。
第2楽章は緩徐楽章で、自由な三部形式で書かれております。この楽章では第3の循環主題が提示されます。
自由なソナタ形式の第3楽章は、調性の定まらないトレモロを背景として主題を暗示する長い序奏に始まり、やがてヘ長調の広大な主題の全貌が現れます。楽章の基調はヒロイックであり、循環主題が全曲を有機的にまとめ上げております。

ここでは、この作品をピアノ連弾に編曲して演奏してみました。ピアノのみで演奏されたピアノ五重奏曲、お楽しみいただければ幸甚です。


 ピアノ五重奏曲 ヘ短調・全曲連続再生 

 第1楽章/モルト・モデラート・クァジ・レント ― アレグロ 
      (I. Molto moderato quasi lento - Allegro) 
 第2楽章/レント、コン・モルト・センティメント 
      (II. Lento, con molto sentimento) 
 第3楽章/アレグロ・ノン・トロッポ、マ・コン・フォーコ 
      (III. Allegro non troppo, ma con fuoco) 

◇「あそびのピアノ連弾」に戻ります◇
◇編曲・MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma